日本財団 図書館


〜障害者のアクセス確保を国家の政策に〜

交通開発センター(TDC)はカナダ交通省の中心的研究機関である。その目的はカナダの交通システムの安全性の確立、及びアクセス性を向上させ、かつ環境を保護することにある。

同センターはアクセス確保に関するプログラムで、主として交通機関の利用において障害者に利益をもたらした。消費者団体と交通サービス提供者の意見をカナダ交通省に認識させ、交通実現委員会を創設、アクセス確保の交通に関する諮問委員会を設立させるに至った。同委員会は消費者団体と業界の懸案事項について運輸大臣に助言できるようなった。1986年カナダ交通省は、障害者交通プログラム(TDPP)に基づいて資金を供与した。連邦の管轄権下にある交通へのアクセスを改善することによって、高齢者・障害者に利益をもたらすことを意図したイニシアチブに資金を供与することとした。

TDPPの資金供与は障害者の社会参加のための国家戦略定めた。その内容は「平等なアクセス、経済的参加、及び障害者による国民生活の本流への実効的な参加、交通機関の利用に障害者の我々の全国交通システムへのアクセスのし易さの向上を図る」と言うこと。

この国家戦略はカナダの交通全般にわたるアクセス確保の向上をもたらすものであった。小型航空機及び旅客鉄道への搭乗、乗車システムの広汎な導入の実施、空港における地上交通(タクシー、レンタカー、及び空港シャトル・バス等へのアクセス性)の向上、カナダ都市間バスによる移動について大きなインパクトを与えるための経済的なインセンティブが提供された。

 

〜ユニバーサルデザインの基本概念を交通へ〜

ユニバーサルの原則は、誰でも使用できる。シンプルであること。問題の処理、物理的な努力が省力であること。デザインだけでなくオペレーションが重要。スムーズでシームレスでなければならない。移動するときの目的を考えて、移動者の立場で考えることが必要である。一番困難なのは外見的に分からない障害者の対応の研究が大切である。

一方、障害者はニーズを伝える必要がある。提供者は利用者側に立って考えるべきである。先に「NO」とは言わない。どうやったらできるかを考える必要がある。助言するのではなく一緒に考えていくことが重要なのだ。「あなたと私」ではなく「我々」である。

供給側は、輸送関係のオペレーションシステムの簡素化、現場スタッフの定期的なトレーニングでリフレッシュする必要がある。例えば酸素ボンベがどこにあるかなど技術的な情報も大切な役割である。視覚障害者は音声、字を大きく、聴覚障害者はメッセージをプリントアップするとか、いろんな情報伝達が考えられる。担当者のコミュニケーションで対応できるか、緊急な情報を放送とか情報装置で伝えられるか、つまり情報の伝達が一つ以上の方法で伝えることが必要である。

すべての人にアクセス可能なモビリティの確保とは、障害者だけでなく、若い人も年をとった人も、乳母車のお母さんも、大きな荷物を持った旅行者も、それぞれの権限で移動を行えるようにすること。家を出て、家に帰るまで、安全に、便利に、快適に移動できることが大切なのである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION