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6-1-2-3. 垂直移動

 

2階以上の位置から乗船する必要のある旅客船ターミナルや舷門と旅客室が異なる甲板に位置する船舶、旅客室が複数の甲板にまたがる船舶においては、垂直移動が必要となり、車いす使用者や車いす以外の肢体不自由者、高齢者等にとってスムースな移動が困難という問題がある。

一方で、昇降設備は、船舶に空間上の制約があることや、船舶の復元性に影響を与える可能性があることとから、その設置について十分に注意する必要がある。

 

6-1-2-4. 船舶の多様性

 

海上交通に使用される船舶の種類は、20t程度の小規模の船舶から、高速船、小規模のフェリー、大型の旅客船、大型のフェリーまでと鉄道、バス等の他のモードと比較して多様性に富んでおり、船舶の構造についても各航路の海象、気象の特性によって大きく異なっている。

よって、海上交通におけるバリアフリー施設の整備を行っていく上でも、船種や規模の違いといった船舶自体の多様性について配慮することも必要である。

 

6-1-3. その他

 

6-1-3-1. 安全性

 

海上交通における安全性の問題については、以下の問題点があげられる。

一つは、ゆれの影響により、高齢者や車いす使用者、車いす以外の肢体不自由者、視覚障害者等の歩行困難者が転倒する危険があり、また、車いす使用者にとっては車いすが暴走する危険があることから、ゆれの影響に対する安全確保の問題がある。

次に、旅客船ターミナルや船内において段差(コーミング段差)等が存在すると高齢者や車いす以外の肢体障害者がつまずいて転倒する等の危険があることから、段差に対する安全確保の問題がある。

三つ目に、乗降時等に高齢者や障害者等を含む全ての利用者が誤って海面に転落するという危険があることから、海面への転落防止のための安全確保の問題がある。

最後に、非常時における高齢者や障害者等の安全確保の問題がある。

 

6-1-3-2. 乗船時間

 

海上交通特有の問題として、乗船時間の問題があげられる。

船内での利用者の行動は、乗船時間の違いによって異なるものと考えられることから、これに伴う副次的行程のニーズも異なり、必要とされる施設項目が異なると考えられる。

例えば、乗船時間が30分以内と比較的短いケースでは、利用者の行動は、乗船・着席・下船といった基本的な行程に限定されることが多く、トイレを利用する、遊歩甲板に出て景色を楽しむ等の副次的行程とこれに伴う船内の移動を必要としないケースも多いと考えられる。

一方、乗船時間が数時間以上というケースでは、トイレを利用する、遊歩甲板に出て景色を楽しむといった副次的行程に加えて、飲食、入浴等の様々な副次的行程が必要になる可能性もある。

 

 

 

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