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6-1-1-3. 海水等の影響

 

海上交通特有の問題として海水等の影響の問題がある。

海水等の影響の問題は、さらに海水による濡れに伴う問題と塩害の問題とに分けられる。

濡れの問題とは、海上交通施設のうち、屋外部分(船舶の遊歩甲板等も含む)では、海面に近い部分にあるため、雨天時や積雪時以外においても波しぶき等により常時海水にさらされている場合がある。このため、陸上施設以上に濡れにより床面が滑りやすくなり、高齢者や障害者等の移動時にすべって転倒する等の危険があるという問題である。

塩害の問題とは、バリアフリー化そのものに関する問題ではないが、海水のしぶき等にさらされることに伴い、海水に含まれる塩分が作用して、金属部分が腐食しやすくなること、通常の陸上施設に比べて耐久性が著しく劣ること、施設の機械的機構部分、電気・電子部品等の劣化が早まり、装置寿命が短くなる等の問題であり、バリアフリー化を進める際にも十分配慮する必要があると考えられる。

 

6-1-2. 海上交通施設構造上の問題点

 

6-1-2-1. 段差(いわゆるコーミング段差)

 

船舶には、船舶構造規則第39条で「コーミング」と呼ばれる水密機構を保つ設備が必要である。

コーミングの高さは、船舶の種類や設置場所の海面からの高さ等によって異なっており、主に舷門付近や遊歩甲板からの船室出入り口等に設置される。

コーミングは、船舶の安全性を確保する上で必ず設置しなければいけない設備であるが、車いすを利用する肢体障害者にとっては、乗下船及び船内を移動する際の妨げになるばかりではなく、高齢者や車いす使用者以外の歩行困難者、視覚障害者等にとってもつまずいて転倒する等の危険があるため、高齢者・身体障害者等が海上交通を利用する際に大きな障壁となる部分である。

 

6-1-2-2. 通路幅

 

運輸省「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者のための施設整備ガイドライン」(平成6年3月 策定)においては、車いす使用者が出入口等を通過する上での推奨値は900mmとされている。一方で、船舶のスペースの制約上、小規模な船舶においては900mmの通路幅の確保が困難という問題がある。

 

 

 

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