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III. 海上交通における高齢者・障害者等のための施設整備のあり方の提言

 

1. 背景及び目的

 

現在、我が国では21世紀に到来する本格的な高齢社会に向け、また、障害者の自立と社会生活への完全な参加を可能とするとともに、社会的、経済的発展によって生み出された成果の平等な配分が実現される環境づくりが緊急の課題となっている。政府ではこうした社会の実現をいっそう促進するため、平成5年3月に策定された「障害者対策に関する新長期計画−全員参加の社会づくりをめざして−」及び平成7年12月の「障害者プラン〜ノーマライゼーション7か年戦略〜」ならびに平成8年7月の「高齢社会対策大綱」に基づき、高齢者・障害者施策に計画的に取り組んでいる。

運輸の分野においても、こうした高齢者・障害者等が社会に参加する際に必要な移動交通手段が不可欠であるということから、高齢者・障害者さらには大きな荷物を持った人や外国人など移動に何らかの制約を受ける人を含む全ての人が安全、円滑かつ快適に利用できる公共交通機関の整備が求められている。

運輸省ではこれまで、「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者のための施設整備ガイドライン」(平成6年3月)、「心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン」(平成2年3月)、「みんなが使いやすい空港旅客施設新整備指針(計画ガイドライン)」(平成6年8月改定)、「鉄道駅におけるエレベーターの整備指針」(平成5年8月)などを策定し、全ての人に安全、円滑かつ快適に利用できる公共交通機関の整備を推進してきた。しかし一方で、海上交通に関する整備指針については、「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者のための施設整備ガイドライン」(平成6年3月)により旅客船ターミナルの整備指針が策定されているものの、船舶及び船舶・ターミナル間アプローチに関する整備指針は、未だ策定されていない状況であった。

高齢者・障害者等にとって望ましい海上交通とは、介助者の手を借りず独力で、安全、円滑かつ快適に移動できる海上交通である。しかし、海上交通は、鉄道等の他モードの施設と比較して、フェリー・旅客船等の船種、船舶の規模等の違い、地形、海象や潮位の変化、波浪による揺れなどの特有の要因が存在しているため、現状の技術では高齢者・障害者等が介助者の手を借りず独力で、安全、円滑かつ快適に移動することが困難な場合が多い。

本提言は、既に策定されている他モードのガイドラインをふまえ、上述の海上交通特有の要因を考慮しつつ、高齢者・障害者さらには妊産婦や小さな子供を連れている人、大きな荷物を持った人や外国人など移動に何らかの制約を受ける人を含む全ての人が安全、円滑かつ快適に利用できる、実現可能な海上交通のあり方を提言するものである。

 

 

 

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