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そこで、一般的に「どの程度の語学力を身につけるのが望ましいか」が間題となる。その点について解明したのが報告書 第2の3)「職場・職域で求められている語学力の程度」であるが、勿論、これも仕事の種類・ポストその他様々の要素が絡んで一概に断定はできない。言うまでもなく、多々益々弁んずで、語学力が高ければ高いのに越したことはない。しかし、総じて言えば、多くの事例にみるとおり、それほど高い能力が普通の職員に求められているものでもないし、一定の水準に達しなければ役に立たないというものでもない。また、21世紀に活躍を期待される職員として多少なりとも外国語の知識・能力を有することが望ましく、職場としてもそのような職員の数が多ければ多いほど望ましいことではあるが、必ずしもすべての職員に語学的能力が必要というものでもない。

たとえ「片言で」であっても「全く駄目」であるより有用であり、簡単な口頭での挨拶がその後のコミュニケーションの円滑化に資する例は枚挙にいとまがない。人事当局も職員も高望みをせず、意欲のある職員が「少しでもいいから着実に語学力を向上させる」という不断の努力を怠らず、当局もこれを陰に陽に支援するという地道な姿勢が大切であろう。もともと学習期間が限られている集合研修のみでは職員の外国語能力を育成することは困難である。従って、計画的な集合研修とともに職員の一人一人に働きかけ、長い期間にわたり、それぞれ担当する仕事に必要な語学力を少しでも身に付けるよう自己研鑽に励むよう奨励するほかに有効な途はない。

 

5. 自己研鑽の動機づけ

 

自己研鑽に励む、励ますといっても、目標が高すぎると達成感が得難く、往々にして挫折する。その面からは、例えば当局としても職員としても当初から余り高い目標を設定せず、寧ろ当初は低めに設定し、それを達成すれば次に少し高い目標を新たに設定する等、目標を小刻みに設定し学習し続ける方法が望ましい。たとえば、日本語の話せない来庁者の来意を把握するための手がかりとして簡単な挨拶を覚えるといった水準の会話力を「業務を円滑に遂行するための知識の習得」と位置づけ、当初の達成目標とする。そうすれば職員も心理的に取り掛かりやすくなるし、「仕事の上でやらなくてはいけない学習」として自己研鑽の動機づけともなる。個々の職員の学習の動機づけは、実際に生じた職務上の必要に起因することが多く、漠然とした見通しでは自己研鑽の努力を継続させることは難しいであろう。また、自己啓発・自己研鑽は、複数の志を同じくする者同志が一緒になって行うと、お互いの励ましにもなり、途中で挫折することも少なくなるなど、単独で行うよりも効果的なこともある。特に語学の習得にはグループ学習が望ましい場合が多く、この点、報告書 第2の5)「職員の語学学習グループ活動」は参考になろう。人事研修担当部局もこの面での職員の自己研鑽活動に積極的に係わるとともに支援の方策を講じることが望まれる。

 

 

 

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