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「家庭防災員」制度自体は「自らの家庭は自らの手で守る」ことを趣旨としております。先程お話ししましたとおり、昭和43年に「市民防災の日」という日を定め、各行政区ごとに活動をお願いしていたわけですが、実はその活動の中から、家庭の主婦の方々が「自分たちの手で何かできないか」と自主的にお集まりいただきまして、翌昭和44年9月に2,000人の方で家庭防災員制度がスタートいたしました。そして10,000人に輪が広がったところで、毎年5,000人づつ増員をお願いしようという事になり、現在約13万人の方々にお願いしております。そして、この方々には、横浜市長から委嘱をするという形で、委嘱状を交付しております。

この「家庭防災員」委嘱式を毎年18行政区ごとに行っているわけですが、実は昨年6月瀬谷区の委嘱式に、兵庫県(婦人防火クラブ連絡協議会)の前澤会長さんに来ていただきまして、阪神・淡路大震災のご経験をお話しいただきました。当日委嘱を受けられた「家庭防災員」の方々も「自分達がやらなくちゃいけない」というのをご認識いただいたと思います。また、磯子区では映画「マグニチュード」に主演された田中邦衛さんにご講演いただいたりと、委嘱式では一方的に市長から委嘱状をお渡しするだけではなく、いろいろな方にご講演をいただいております。

委嘱後は研修を行いますが、この研修ではいろいろな事を覚えていただきますので、火災、地震、応急手当などを織り込んだ「家庭防災員必携」というポケットサイズの手帳を、委嘱式当日に新「家庭防災員」にお配りしております。これを研修時にお持ちいただいて、「今日はこの何ページをやります」という形で学んでいただきます。また初期消火訓練などをやりますと、粉などをかぶって服が汚れたりしますので、銀色の「防災コート」や帽子、また、研修用の救急セットなども全員にお配りしています。

では、どういう研修を行うかという事ですが、まず委嘱後2年間は基礎研修ということで、年2回程基礎的な事を学んでいただきます。その後の8年間は実践研修ということで、防災施設の視察や消防出初め式への参加などで、消防の事を学んでいただいております。そして、委嘱後10年を経過したところで「家庭防災員感謝会」を開きまして、市長から感謝状を贈呈して、研修はここで一区切りにさせていただいております。ただ、研修期間が終わったから「家庭防災員」ではなくなるんだということではなくて、一生「家庭防災員」はやっていただき、みずからの家庭を、また、隣近所の地域を守っていっていただきたいという事をお願いしております。

また、13万人もの方々がいらっしゃいますと、すべての方に情報を伝達するのが難しいので、連絡員という制度をもうけております。横浜市では約2,800の自治会・町内会がございますが、それがある程度集まると連合町内会というのを作っております。そこで連合町内会単位に代表連絡員、単一町内会ごとに連絡員をお願いして、いろいろな情報を送らさせていただいております。

それから、小さなお子さんがいらっしゃると、研修会にもなかなか参加できないという事もございますので、研修を行っている間、保育の資格を持っている方がお子さんをお預かりする、「一時託児」という制度も取り入れております。

「家庭防災員」の方々にはいろいろな訓練をやっていただきますが、万が一訓練で怪我をされた時には、横浜市では「消防団員等公務災害等補償条例」のなかに訓練参加者も適用するという条文を盛り込みまして、補償の対応を図っております。

また、煙草による火災を減少させるために、駅頭などで歩行禁煙を呼び掛ける「歩行禁煙運動」などにご参加いただいたり、最近、放火火災が非常に多くなっておりますので、連続放火があった地域では隣近所にお声をかけていただいて、たとえばゴミは朝出すとか、自宅のそばに古新聞・古雑誌を積んだままにしないとか、自分の家庭だけではなく、気が付いたところでお声をかけていただくというような活動をしていただいております。

横浜市で行っております、市民防災活動の一端をお話しさせていただきましたが、それらの活動内容が皆様の参考になればと考えております。今後も、それぞれの地域の中で側面から消防行政にご協力いただけますよう、消防関係者の一員としてよろしくお願い申し上げます。

[講演の一部を掲載しました。]

 

 

 

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