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その中で国の防災関係機関は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて、全国的な観点から大災害が発生した場合にどのように機能的効果的に対応するか、体制の整備をどうするか等について、この3年間力を注いでまいりました。これは、自治体消防の制度を変えるというものではなく、大災害があった場合に全国的なレベルで対応できるような仕組みを作ることで、非常に重要なことであります。

例えば、大規模災害の際に、全国的な情報連絡体制をどのようにするかということであります。今でも都道府県・市町村等は、消防防災関係の無線等かなり整備されております。これを全国レベルの連絡体制にするために、地上系のみではなく衛星系の無線をこれから整備することによって、防災関係の情報連絡体制の「多重化」と言っておりますが、単線ではなく複線のルートで情報が伝えられることになります。

そして、防災関係の情報をこれも阪神・淡路大震災の教訓でありますが、これを画像や映像で見ることにより被害の程度、規模等が一目でわかることになります。この画像伝送システムは、現在、比較的大きな都市から整備を始めておりますが、高所監視カメラで市内の状況を衛星通信を使って、首相官邸等にこの画像を伝送するものであります。このように、情報通信体制を全国的なネットワークにすることが先ず一点でありまして、二点目は広域体制の問題であります。

消防は市町村の機関でありますので、比較的小規模の災害はそれぞれの市町村で対応できますが、阪神・淡路大震災のような災害になりますと、全国から応援が集まることになります。そこで、応援部隊の活動が混乱しないようなシステムを予め整備するということで、平成7年7月に緊急消防援助隊を発足させております。これは、比較的大きな消防本部から予め消防庁に登録しておき、どのような時、どこの消防本部が出動するかを決めております。

一昨年12月、新潟県と長野県の県境の蒲原沢という所で大きな土石流災害がありまして、何人かの方が亡くなられました。その時には、勿論消防だけではなく、警察、自衛隊等が出動いたしましたが、規模の大きな災害であったことと、相当な資機材を使って救助作業をする必要があるということから、緊急消防援助隊が出動いたしました。このように、大災害によって被害を受けた所へ全国の消防機関が応援に駆け付けるとい体制づくりをしているところであります。

更にもう一点ですが、大震災の教訓といたしまして、災害に強い町づくりをする必要があります。これは、行政が積極的にとり組まなければ整備が進まない性格のものですので、災害関係の事業に対して、国で積極的に財政措置を講ずることになっております、これは大災害の際等に、体育館・公民館等避難場所となるような施設は、耐震性を強化する必要がありますので、都道府県・市町村等がこの種の事業を積極的に進められるように国が財政措置を講じることにしております。過去3年間の事業実績からみても、防災関係につきましては相当前向きに進められていると言えると思います。

前に申しました通信技術の発達に伴う防災情報通信体制や全国的な応援体制の整備等は、全体の枠組み作りであります。勿論、それは必要でありますが、一番大切なことは、災害が起きた時の一人ひとりのいざという時の備え、心構えができているかということであります。日頃から防災意識の高揚のためには広報媒体手段を使ってPRをしなければならず、このことは行政として積極的にやっているわけですが、特に皆様方のような自主的な防災組織は、住民の防災意識の高揚に大きく寄与していただける組織だと思いますので、この面での活動を大いに期待しているところであります。

次に、消防体制に関わることを若干申し上げたいと思います。

現在行政としての消防体制は、一つには消防本部及び署の組織つまり常備消防であります。

もう一つは、普段は他の職を持っていて、いざという時に出動する非常備消防としての消防団があります。

常備消防につきましては、予算の規模、職員数等この50年の間に飛躍的に伸びてきておりまして、自治体消防の制度ができた昭和20年代には、常備消防を持っている市町村の数は少ないものでしたが、現在では約3,200ある市町村の内、約3,100が常備消防化しております。そこで、常備消防が行政として進めるべき問題について少し申し上げますと、大都市の消防は、人員・施設・装備等の面では十分ですが、全国的にみますと職員の数が100人未満の消防本部が全体の半分以上あります。

 

 

 

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