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そのいくつかの仲裁裁判においては、いずれも旗国以外の国が公海上の船舶を臨検・拿捕したものであり、干渉した米国の国家責任が認められている(2)。ジェシー号事件(3)、ワンデラー号事件(4)、ケイト号事件(5)、フェイバリッド号事件(6) などである。これらは、米国沿岸警備隊監視船(その前身である税関監視船revenue cutter)による公海上の英国漁船に対する臨検・拿捕事件であり、米国がこのような措置を公海上でとる権限について両国間に合意が存在していないのであるから、公海の自由に対する侵害であるとして、臨検拿捕によって操業できなかった期間の逸失利益、当該期間の船員の雇用費用など被拿捕船舶の被った損害を金額算定して賠償金額の支払いを命じている(7)

(ロ) 公海上の外国船舶に対して、いずれの国も慣習法又は特別の合意がある場合を除いて干渉することはできない。これに対して臨検、捜索あるいは拿捕という執行措置をとることは国際法違反となり、執行国の国家責任は免れないという趣旨である。このような公海自由の原則の例外として、慣習法上、公海上の外国船舶に対して執行措置が認められてきたものがある。海賊行為や奴隷取引、あるいは国旗の濫用の場合である。これらについては、現在では公海条約及び国連海洋法条約の中に盛り込まれており、さらに海賊の拿捕(国連海洋法条約第106条)、公海上の臨検(国連海洋法条約第110条(3))、追跡権(国連海洋法条約第111条(8))については、特に、その濫用に対して執行権を行使した国の責任についての規定が置かれている。次に、これらの規定の内容を検討しておくことにしたい。

(2) 海賊の拿捕

(イ) そのような、公海自由の原則の例外として、国際慣習法上認められてきたのが「海賊」である。いずれの国であるかを問わず、公海上で海賊船舶を拿捕し、処罰することができるとされてきた。この海賊船舶の拿捕・処罰について、公海条約第19条及び国連海洋法条約第105条が条文化している。

その場合、海賊船舶ではない船舶を海賊船舶であるという理由で拿捕するような措置がとられることのないように、十分な根拠なしに拿捕が行わ

 

 

 

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