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このような担保金等の提供による釈放等の制度は、これまで、外国人による漁業活動について、「漁業水域に関する暫定措置法」(昭和52年法律第31号。以下、「漁業水域暫定措置法」という。)にはじめて規定された3 が、今回の国連海洋法条約批准に伴う国内法の整備により、船舶に起因する海洋汚染についても導入されることとなった。

また、外国人による漁業活動についても、排他的経済水域における漁業等に関しての主権的権利の行使等についての必要な措置を定めたEZ漁業法が制定され4、国連海洋法条約の発効にあわせて施行されることとなり、その第24条第1項において、あらたに拿捕に係る担保金の提供による早期釈放制度が制定され、従来の漁業水域暫定措置法におけるボンド制度は廃止されることとなった5

 

3 EZ漁業法におけるボンド制度の概要

 

排他的経済水域における外国人による漁業活動に関する主権的権利の行使としての措置である担保金等による早期釈放制度の概要は以下のようなものである。

(1) 本法の規定に違反した罪その他の政令で定める罪にあたる事件に関して外国人を拿捕した場合、取締官6 は、当該拿捕に係る船舶の船長(代行者を含む。)及び違反者に対し、遅滞なく、担保金等の提供による釈放等の措置の適用を受け得ること、及び提供すべき担保金の額を告知しなければならないこととされている(法第24条第1項)7

3 昭和52年に旧ソ連との間で締結された「日本国の地先沖合における1977年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定」第6条第3項が「日本国の権限ある機関によってソヴィエト社会主義共和国連邦の漁船が拿捕されたときは、ソヴィエト社会主義共和国連邦政府に対し、その旨が外交上の経路を通じて遅滞なく通報される。拿捕された漁船及びその乗組員は、適当な担保又はその他の保証が提供された後に遅滞なく釈放される。」として漁業関係法令違反で拿捕されたソ連漁船及び乗組員について担保等の提供による早期釈放が義務づけられ、漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律(昭和52年法律第83号)が制定され、漁業水域に関する暫定措置法(昭和52年法律第31号)にいわゆるボンド制度が規定されることとなった。

漁業水域に関する暫定措置法違反事件に関する拿捕に係る担保金の提供等に関する省令(昭和52年省令第2号)参照。

4 排他的経済水域における外国人の漁業等の規制は、この法律によることとなるが、その適用に伴う法執行については、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律第3条第1項に基づき、漁業法、海上保安庁法、警察法、刑事訴訟法などの法律が適用される。なお、漁業法は、第74条及び第141条2号に限られる。

5 排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律附則第3条。漁業水域に関する暫定措置法違反事件に関する拿捕に係る担保金の提供等に関する省令を廃止する省令(平成8年省令第1号)。

6 排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律施行令第6条は、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律第24条第1項の政令で定める取締官とは、漁業監督官、海上保安官及び警察官をいうとする。

なお、漁業監督官は、農林水産大臣によって任命され、漁業に関する法令の励行に関する事務を行うこととして、司法警察員として漁業法令違反を取り締まる権限が与えられているが、都道府県の漁業監督吏員は、外国人の取り締まり業務を担当するのは適当ではないことから、違反者の通報などの協力の限度で関与する(EZ漁業法施行令第1条第2項参照)。

7 排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律第24条第1項に規定する事件に関する拿捕に係る担保金の提供等に関する命令(平成8年総理府・農林水産省・運輸省令第1号。以下「命令」という。)第2条によれば、告知は、以下の事項を記載した書面によることとされている。1]拿捕に係る船舶の名称、2]違反者の氏名、3]拿捕の年月日、4]違反行為の類型、5]法第24条第1項各号に掲げる事項、6]担保金(担保金の提供を保証する書面(以下「保証書」という。)に記載されているところに従って提供されるものを除く。)又は保証書(以下「担保金等」という。)の提供期限、7]担保金等の提供場所及び提供先、8]告知の年月日、9]告知をする取締官の氏名及びその者が法第24条第1項の取締官である旨、10]その他必要な事項、である。

なお、同命令第3条は、担保金等の提供期間の延長について規定している。第3条第1項は、担保金等の提供期間の延長を求める者は、次に掲げる事項を記載した書面を取締官に提出しなければならない。1]提供期間の延長を求める者の氏名又は名称、住所及び違反者との関係、2]拿捕に係る船舶の名称、3]違反者の氏名、4]拿捕の年月日、5]告知の年月日、6]希望する延長期間、7]提供期間の延長を求める理由、8]その他必要な事項、である。

そして、これを受けて、第2項は、取締官は、前項の書面の提出があったときは、当該書面に係る担保金の提供期間の延長を求めた者に対し、次に掲げる事項を通知するものとする。1]提供期間の延長を求める者の氏名又は名称、住所、2]拿捕に係る船舶の名称、3]違反者の氏名、4]拿捕の年月日、5]提供期間の延長を認める旨又は認めない旨及び延長を認める場合は、延長後の担保金等の提供期限、6]通知をする取締官の氏名及びその者が法第24条第1項の取締官である旨、7]提供期間の延長を求める理由、8]その他必要な事項、である。

 

 

 

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