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釈放後の手続きからみたボンド

慶應義塾大学教授  安冨 潔

 

 1 はじめに

 

1994年11月に発効した「海洋法に関する国際連合条約」(以下、国連海洋法条約)という。)は、わが国において、1996年7月20日に効力を生じることとなったが、これに伴い、関係国内法が整備された。

国連海洋法条約では、領海・排他的経済水域において、沿岸国は、国内法令の遵守を確保するために乗船、検査、拿捕などの必要な措置をとることができるとともに、漁業活動及び海洋汚染活動について、それぞれ拿捕された船舶及びその乗組員について、供託金の支払い又は合理的な他の保証の提供の後に速やかに釈放することを沿岸国に義務付けている1

この国連海洋法条約の規定を受けて、国内関連法規の整備に伴い、担保金の提供による早期釈放制度(以下、「ボンド制度」という。)を、外国人による漁業活動について「排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使などに関する法律」(平成8年法律第76号、以下、「EZ漁業法」という。)、及び船舶起因の汚染について「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」(昭和45年法律第136号。以下、「海洋汚染防止法」という。)を改正して、それぞれあらたに設けている。

1 国連海洋法条約では、漁業活動に関して、領海における無害通航との関連での旗国と沿岸国との調整を図り(17条・19条第2項(i))、沿岸国の法令制定権を認め(21条第1項(e))、執行措置について制定された法令に基づく行使を許容しつつ(ただし、無害通航との関係では沿岸国の保護権として25条による措置がとり得るにとどまる)、排他的経済水域においては、沿岸国としての管轄権及び天然資源の探査・開発・保存及び管理のための主権的権利を認め(56条)、そのための執行措置として必要な措置を採りうることとして(73条第1項)、「拿捕された船舶及びその乗組員は、妥当な供託金の支払又は他の保証の提供の後に速やかに釈放される」と規定する(73条第2項)。

また、海洋環境の保護と保全についても、各国の一般的な義務を定め(192・194条)、船舶起因汚染に関する執行措置について、旗国管轄を原則としながら、外国船舶に対する執行措置について、沿岸国と入港国の介入する場合を拡大しつつ(220条1項・2項、218条1項)、旗国管轄との調整のために、「調査により海洋環境の保護及び保全のための適用のある法令又は国際的な規則及び基準の違反が明らかにされた場合には、合理的な手続(例えば、供託金その他の適当な金銭上の保証)に従うことを条件として速やかに釈放しなければならない」(226条第1項(b))として担保金等の提供による早期釈放という保障措置が設けられている。

 

 

 

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