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そのため、立法者は罰則の範囲を決める際にも体罰を科することを禁じた条約の規定に配慮することもできたが、そうしていない。スペイン船のスペイン人船長が法律によって訴追されたのは彼がその罪を犯すことで利益を得ていたからであり、彼には利益に見合うだけの罰金が科せられるべきであり、もしそれを支払わない場合は1年以内の拘禁が課せられるべきである。このことは被告が国連海洋法条約で禁止されていると主張する直接的な拘禁とは異なるものであり、立法者はこのような間接的な拘禁を法律から排除することを意図していないことを示している。

また判決は、漁業法の罰則規定が直接的な拘禁を廃止するように改正された理由については、次のように述べる。

国際法に大きな変化が生じており、排他的経済水域における不法な行為は当該沿岸国のみならず諸外国にも大きな関係を持つようになった。違反の処罰は依然として望ましいが、もはや個人そのものを処罰することに大きな意味があるものではなくなった。違反は商業的あるいは経済的なものであるため、まず罰金の支払いによって処罰されるのがふさわしい。そうして、それが支払われない場合のみ拘禁が適用されるべきである。いずれにしても違反者が罰金を支払えない場合は刑法上一定期間の拘禁が適用される。立法者は罰金を5万ラントから100万ラントへ引き上げているが、拘禁期間をこれに比例させて引き上げると非常に長い期間となる。従って、拘禁期間の決定は裁判所の裁量にゆだねられていると考えられる。このため、漁業法が直接的な拘禁を削除していることから、裁判所はまず罰金を科することを考慮し、罰金の不払いの際の拘禁期間を考慮すべきである。

次に、違反の性質を検討した上で、船舶等の装備と魚の没収を行う理由づけを以下のように述べる。

容疑事実が違法行為となったのは最近の1990年7月10日からであるが、そのことはスペイン当局にも通知済みである。スペイン当局は周知を行っており、容疑者の供述によれば、船の所有者もナミビア水域で漁獲する事の違法性については言及していたという。

 

 

 

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