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被告は以下のような主張を行った。

1. 1973年の南アフリカ漁業法はナミビア法に組み込まれていない

2. 組み込まれていたとしても、ウォルヴィス湾に接続する経済水域においてのみであり、ナミビアの経済水域全域に対してではない。

3. 海洋法条約上経済水域内での法令違反に対して身体刑は禁じられている。

なお、1973年の漁業法は1990年7月30日の「領海および排他的経済水域法」によって改正され、17条に、違反船舶に積載された魚類、および違反に使用された船舶および装備、用具等の没収および差し押さえを裁判所が命じることを認める条項を追加しており、また、同条に規定されていた罰金の金額を5万ラントから100万ラントに引き上げ、さらに、7年以下の懲役の規定を削除した(3)

被告の主張のうち、1973年の南アフリカ漁業法がナミビア法に組み入れられているかどうか、および、被告が違反を犯した水域にナミビアの管轄権が及ぶか否かについての判旨は本稿の対象と直接の関係がないので省略する。

(ロ) 判旨

判決は、海洋法条約が拘禁を禁じていることについて次のように述べる。

法律上直接の拘禁と間接的な拘禁は区別される。条約73条3項が禁止しているのは直接的な拘禁のみであって、罰金の支払いを怠った場合のような間接的な拘禁については禁止していない。条約73条2項は保証の提供によって拿捕された船舶および乗組員の釈放することを規定しているが、保証がない場合は釈放も行われない。そのような保証は適当な保証金の提供や罰金の賦課によって行われ、支払いがない場合は一定期間の拘禁となる。罰金の支払いの保証のない者に罰金刑を課することは無意味である。したがって、罰金の支払いを怠ったことによって拘禁される場合には、沿岸国は直接、拘禁を課していることにはならない。立法者は国連海洋法条約の規定を熟知しており、たとえば、領海および排他的経済水域法(The Territorial Sea and Exclusive Economic Zone of Namibia Act 3 of 1990)の他の規定には条約に対する配慮が見られる。

 

 

 

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