日本財団 図書館


船とその装備の価額は12,548,744ラントであり、違反の性質とその犯行方法は高価で高度な装備の使用に依っている。違反の性質はナミビア経済に根本的な損失をもたらすものである。排他的経済水域の宣言を行った理由の1つはナミビアの資源である魚を計画的に管理し規制し、保存するためであるから、社会的利益が強調されなければならない。部分的なものであっても、国家の資源を破壊することは国家全体にとって重大であるという事実を見過ごすことはできない。

航行装備を含むすべての用具はナミビアの経済水域に到達し、そこでトロール漁業を行うために用いられたが、没収を決定する前に、船舶の所有者が船舶と装備を違反に用いられることを防ぐために必要な行動をとったかどうかを調べる必要がある。船舶の所有者は容疑者がナミビア沿岸で漁業を行う可能性があることを知りながら、容疑者が漁業を行ってはならないことを明確に指示しなかった。容疑者が行ったのは営利的な行為であるから、漁業が行われる場所について、船舶の所有者が情報を得ていたことは明白であり、漁業の進捗状況について容疑者と所有者とは連絡を取り合っていたはずである。容疑者がどこで操業しているかを明確に知っているはずであるから、所有者が違反を犯すことを防ぎたいのであれば、容疑者がすぐにナミビアの経済水域から離れることを指示していたであろう。従って、容疑者の雇用者あるいは船舶の所有者はこの違反の防止のために必要な措置をとらなかったといえる。

このように述べて、船舶等の没収を行う以下のような理由をあげた。

1) 没収は、容疑者本人のみならず、当該船舶の所有者等がナミビアの経済水域で違法に操業することを予防する効果がある。

2) 経済水域設定以来違反が続いてきたことを考慮すれば、本件のみが特別な事件なのではなく、違反はスペイン船によってたびたび行われてきたといえるため、没収は他のスペイン船による違反防止の効果がある。

3) 船舶と装備、用具は違反を行うにあたって不可欠であった。

4) ナミビアは監視用航空機1機、規制対象船舶より速度の遅い警備艇2隻それに行動範囲の限られたヘリコプターしか保有しておらず、広い水域を警備することが困難であるが、将来、同様の違反が行われる可能性があるため、違反防止のために没収は効果的である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION