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漁業取締りと追跡権に関する外国の事例

関東学園大学助教授  深町 公信

 

(1) 漁業取締りに関する事例

国連海洋法条約73条は、排他的経済水域における漁業に関する沿岸国法令違反により拿捕された船舶およびその乗組員が合理的な保証金の支払いまたは合理的な他の保証の提供の後に速やかに釈放されることを規定しており、また違反について、拘禁を含む身体刑を沿岸国が科することを禁止している。この規定は、沿岸国の許可を得て漁業を行う者が沿岸国の漁業取締法令に違反した場合を想定しており、無許可の者による違反の場合は、このような司法的制裁に対する歯止めはないと言われる(1)。ところが、海洋法条約にはそのような保証金の性質あるいは沿岸国が身体刑を科すことのできる排他的経済水域での違反についての具体的規定はない。そのため、各沿岸国の国家実行を見て、保証金の性質や身体刑を科すことのできる違反の範囲を判断する必要がある。以下の事例は、排他的経済水域内での無許可漁業に対して懲役刑を言い渡し、かつ保証金の性質についての言及を行ったものである。

S. v. Martinezナミビア高等裁判所、1991年4月10日判決(2)

(イ) 事件概要

被告はスペイン人で、スペイン船籍の漁船Isla De Tambo号船長である。1990年10月12日から11月24日までの間にナミビアの排他的経済水域で無免許で操業して、漁業法(Sea Fishery Act 1973 (South Africa))に違反した容疑で起訴された。当該船舶、用具、積載されていた魚類は差し押さえられたが、魚類はすべてがナミビアの排他的経済水域内で漁獲されたわけではなかった。

 

 

 

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