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これによると、北海道・東北・関東はほぼ東京湾の背後圏、北陸・中部は伊勢湾の背後圏、近畿・四国・中国の大部分・沖縄は大阪湾の背後圏、中国の一部と九州の大部分は関門港の背後圏となっており、計算はほぼ実績値を再現していると言える。

 

(3) 就航便数からみた検討

本節では、先に前提条件で述べたように、日本の港湾と外国港湾には全て直行便と1港寄港便のみが就航する、と仮定した。従って、各港湾における航路別便数を実績と比較しても意味は無い。しかし、日本の外貿コンテナ貨物を輸送するのに必要な利益最大化行動を船社が採った場合の便数が算出されており、港湾バース容量との比較で重要な情報が得られる。図表III-2-43は計算上の船社の各航路別配船便数(1カ月)を示したものである。各港湾において、航路別就航便数は現実の便数より当然少ない。なぜならば、実際は、各国の多くの港湾に寄港し、貨物を集荷して運航されているが、本計算では、多港寄港は許されていない。したがって、各港湾ともいずれの航路でもバース能力に余裕がある。この余裕はアジア〜オセアニア各国の貨物の流動を考慮にいれた配船を考えると寄港便数が増え実体に近づくものと思われる。

 

(4) アジア各港湾の取扱貨物量による検討

これまで、日本の国内港湾を中心にモデルの現象再現性を検討してきた。しかし、国際港湾間競争の将来の姿を把握するためには、外国港湾での取扱貨物量がモデルによって精度高く再現できるかどうかが重要である。本節では、対象としたアジアの各港湾について、その取扱貨物量がモデルによってどの程度再現可能かどうかを検討する。

図表III-2-44は対象港湾での取扱貨物量(輸出入別およびトランシップ貨物)の計算値と実績値を示したものである。ただし、香港の実績値については、香港・基隆・高雄の平均値が示されている。この結果から解るように、日本の港湾についてのトランシップ貨物量はほぼ現状を再現できている。しかし、香港では計算値が若干大きめに算出されているがほぼ実績値に近い値が算出できている。なお、シンガポール港では、狭義のトランシップ率が約60%と言われているが、1893年時点での正確なトランシップ貨物量のデータは入手できなかったので実績値は記入していない。ただし、計算に用いたシンガポールの輸出入貨物量には、既に、近隣背後圏の貨物がすべてトランシップであり、約57%がそれを占めているので、この図のシンガポール港輸出入貨物は既に、約57%をトランシップ貨物が占めていると考えてよい。計算では、シンガポール直背後圏以外(例えば、中国、釜山、日本等)からのトランシップ貨物量が算出されている。したがって、本モデルでは、概ね、トランシップ貨物量も再現できると考えてよいと思われる。

 

 

 

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