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5. 物流サービスの質的変化

 

(1) 荷主企業の観点から

高雄港のコンテナ貨物取扱量のうち、56%は台湾に発着する貨物で占められている。香港、シンガポールのようなトランシップ型港湾以上に、背後圏の荷主企業の物流ニーズに対応することは重要な課題である。台湾荷主の国際物流ニーズがどのようなものであるのか、今回訪問した日系家電製造業者の台湾子会社A社の事例を通じてみることとする。

台湾では、1950年代に輸入代替による工業化が進められ、輸入製品に対する割当や高関税制度が採用された。また1960年代には、外貨獲得のため輸出産業育成策が採用され、急速な工業成長がもたらされた。この時期に、多くの日系企業が台湾に進出したが、A社も1962年にラジオの工場を設け事業を開始した。

第二次石油危機後の世界同時不況のなかで、台湾はエレクトロニクスやハイテク製品など中心とする産業に構造転換を図り、このような製品の輸出基地として位置づけられるようになった。A社の本社では、A社をオーディオ製品等の世界への輸出基地として位置づけ、台湾生産分の約半分を輸出、約半分を国内販売している。

A社の販売を担当する販社では、台湾をグループのアジア域内国際調達拠点として位置づけている。A社とそのグループで調達する部材とを合わせ、中国を除くアジア域内から国際調達を行いFCLにまとめて日本、米州、欧州に輸送している。とくに高付加価値で迅速性が要求される部材については、航空輸送も利用している。九州向けの高付加価値部品の場合には、航空機を利用して発注から6時間で納入する場合もある。

A社の親会社が中心となり、グループとしての国際物流戦略を採用している。日本発の貨物運賃はグローバルビットにより規模を活かした契約を船社と結んでいる。しかし、海外現地法人からの輸出については、現地法人が本社と相談したうえで起用船社等を決定する。在庫削減、リードタイムの短縮を基本にして、安定したサービス、スケジュール、運賃等を考慮して決定する。世界の拠点を結んだグループ内の国際情報システムが構築されており、在庫、販売状況等を確認することができる。

台湾内の販売物流については、日本と同様にジャストインタイムでの配送が求められている。台北市近郊では激しい道路混雑があるにもかかわらず、発注から3時間以内の配送が求められる場合がある。物流サービスレベルの向上が求められる一方、物流費用の低減も必要とされる。このため台湾内物流システムの再構築を進めており、物流センターを集約する計画である。

 

(2) フォワーダーの役割

欧米や日本では、フォワーダーは国際物流サービスの提供者として重要な役割を果たしている。

 

 

 

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