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一方、港湾の管理、運営は地元自治体が担うべきとする考え方も根強く、高雄港務局を台湾省政府から高雄直轄市に移管することも検討されてきた。台湾訪問時には、台湾省政府の簡素化に伴い、高雄港務局が高雄直轄市へ移管されるとの見方もあったが、結局交通部の直轄に落ち着いた。

高雄港務局の組織は、上記のとおりである。組織の特徴として、行政主導の管理型であることがあげられる。港湾貨物、船舶等の管理を主体としており、到着した船舶や貨物の処理が中心となっている。世界第3位まで急成長した港湾であるにもかかわらず、港湾の成長を積極的に導くポートセールス、港湾開発、ロジスティクス支援、EDI等の積極的な港湾機能を担う部署は見当たらない。これらの機能は、専門の部署ではなく、伝統的な管理を行う部署で分担されている。

交通部では、港湾民営化の一環として、高雄港務局を将来的に企業化する計画である。報道によれば、資産930億NT、予想営業利益88億NTのKaohsiung Harbor Company Ltd.(KHCL)に移行する。従業員数は現在の2,472人から900人に削減され、1,500余人はKHCLから分離される港湾サービス、造船、修繕会社等に移籍する。

 

4. 港湾政策

 

(1) 国際運輸政策

交通部が現在インターネット上で公表している運輸白書によれば、海運の国際競争力強化を目指した国際運輸政策は次の図表II-4-6のとおりである。交通部での現地調査によれば、この白書の策定年次は1996年頃であり、調査時点では最新のものである。本節の次項以下では、ここで掲げられた政策のうち港湾にかかわる主要な政策の進展を述べる。

 

(2) 港湾運送事業の民営化

港湾運送事業の民営化は、海運行政、港湾運営・管理の機構改革、港湾料金と管理方式の改善、港湾運営効率の改善にかかわる課題である。従来、台湾主要港の港湾運送事業は、各港務局が管理し独占的に行われてきたため様々な非効率が生じており、早急な改革が求められていた。

高雄港の場合には、公共、専用バースともに高雄港務局作業部の責任によって、高雄市埠頭荷役運搬公会(CCTC: China Container Transport Co.)の派遣労働者が行っていた。同公会は、港務局が51%、OOCLが25%、その他船社が24%を投資して設立された。荷役作業が必要な船社は、労働者の派遣と荷役機械の利用を港務局に申し込み、荷役サービスを受けていた。荷役料金はタリフによって定められ、港務局は収受した荷役料金の26%を残し、74%をCCTCに支払っていた。荷役作業は、3シフト24時間体制で行われたが、料金水準や荷役作業の硬直性に対して苦情が生じていた。港湾労働者は労働組合員の縁故採用が大半で、賃金は工場関係労働者の3倍、労働時間は半分程度と極めて優遇されていた。

 

 

 

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