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すでに着手された民営化のパターンをみると、政府は少なくとも民営化する企業の発行株式のうち30%を保有し、さらに民営化した企業に経営幹部として政府関係者を送り込んでいる。つまりシンガポールの場合、公企業の民営化は株式の取得により所有権が部分的に民間部門に移転するとしても、政府は依然として大株主であり民営化された企業の活動に対して大きな影響力を及ぼすことができる。

 

5. 物流サービスの変化とシンガポールの対応

 

(1) トランシップ政策とフィーダー・ネットワークの成長

シンガポール港におけるトランシップ・カーゴが増加し始めたのは1980年代中頃からである。1985年の深刻な経済不況に直面して、当時の港湾庁はアジア域内のトランシップ・カーゴをシンガポール港に取り込むことによって活路を見出そうとした。シンガポールの場合は、国内での港湾間競争は無いが、近隣諸国のマレーシア(クラン港)、インドネシア(ジャワ港)、タイ(レムチャバン港)と競合関係にある。そのため、大手船社がシンガポール港をハブとして寄港するように、またフィーダー船がシンガポール港に寄港するように港湾庁は港湾利用料を引き下げている。また、船社が新しい市場を開拓するように様々なインセンティブ政策がとられた。このような港湾庁の料金政策や優遇政策は、コンテナ船の大型化が進むにつれて効果をあげる。また、ハブ港で大型コンテナ船のカーゴを積み替え、アジア域内の港に運ぶためのフィーダー船のネットワークが重視されている。

 

(2) インフォメーション・テクノロジー(IT)の重要性

シンガポール港のフィーダーサービスが、急速にアジア域内のフィーダー・ネットワークを広げていった背景には、インフォメーション・テクノロジーの急速な普及がある。狭いシンガポール港のコンテナ・ターミナルで毎日、何千というコンテナを荷役するには、正確で迅速なオペレーションを可能にする管理システムが不可欠である。1980年代後半には、港湾庁は港内のすべてのオペレーションをリアルタイムで監視できるシステムを整備している。インフォメーション・テクノロジーの導入に対応して、シンガポール港を使用する船社と運送会社は情報化を急速に進めてきた。見方を変えれば、独占者である港湾庁が提供するシステムに対応できる企業だけが、シンガポール港で生き残ることができるといえよう。

 

(3) トランシップ拠点における税関の役割の変化

関税・物品税局は、シンガポールでのトランシップメントを促すために、その手続きを見直し、ターミナル間でのコンテナ横持ちについて新しい手続きを導入した。

 

 

 

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