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(2) 公企業から持ち株会社への利益の還流

持ち株会社の傘下には、資本の所有関係によって多数の公企業が幾重にも層をなしている。持ち株会社によって管理されている公企業のうち、純利益をあげている企業はその20%を持ち株会社に納付する。持ち株会社は、吸い上げた資金を傘下におく他の公企業に再投資して事業を拡大し、利益をあげる企業に育てていく。

テマセク持ち株会社の傘下に置かれていた港湾庁も、やはり法定機関として利益の還流システムに組み込まれていた。港湾庁は、1997年10月1日からシンガポール港運営(株)に株式会社化され港湾・港運関係のビジネスを引き継いだ。政府が同社の発行株式を100%保有し、現在でもテマセク持ち株会社の傘下に置いている。図表II-3-10は株式会社化前の港湾庁の収入と支出の関係を示している。

図表II-3-10 に示されたConsolidated Fundへの納付金が、港湾庁からテマセク持ち株会社へ納付される資金である。これは、Consolidated Taxという名称の税金を集めたものであり、毎年、純利益の20%を持ち株会社に納付することになっている。

1997年10月にシンガポール港運営(株)が設立され、かつて港湾庁が行っていたターミナルサービスや港運サービス等の収益をあげるビジネスがシンガポール港運営(株)に移管された。新しい管理システムのもとでConsolidated Taxに代えて、いわゆる法人税に該当するCorporation Formal Taxが課せられ、純利益の26%をテマセク持ち株会社に納付することになっている。なお、図表II-3-10では、港湾庁が純利益の20%を年金基金に納付していることも示されている。以上から、1997年10月以降、シンガポール港運営(株)は純利益の20%を年金基金に納付し、残りの純利益の26%を法人税としてテマセク持ち株会社に納付することになる。

 

図表II-3-10 1996年と1997年における港湾庁の収入と支出

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出所:PSA Annual Report

 

 

 

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