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第2章

香港

 

1. 本章の目的

 

少なくとも港湾研究の分野では、通常、香港のコンテナ港湾管理は統治主体である旧香港政庁そして現香港特別行政区政府による「レッセ・フェール」政策=コンテナ・ターミナルの管理・運営の民間企業への全面委任という形をとっているとされてきた。そしてこのような認識にもとづいて香港港の「民営」管理・運営体制は港湾管理における「民営化」を模索する他の国々にとって1つのモデルを提供してきたと言われている。

しかし港湾を狭くコンテナ・ターミナルに限定して考えるならば「民営」体制を強調することも可能であるが、港湾を都市・地域の一部として見るならば、単に「民営」体制を強調するだけでは不十分である。コンテナ・ターミナルの「民営」体制とそれを支える環境、とりわけ「官」側のスタンスの検討あるいは「官民」関係の検討が必要である。さらに香港をめぐる最近の環境変化が香港港の「民営」管理・運営体制のあり方に対して変容を迫りつつあることを考えるならば、「民営」体制を自明のものとして香港港を評価することはできない そこで本章では、香港港の「民営」管理・運営体制とはどのようなものなのか、またそれは現在、どのように変容しつつあるのかを考察することとする。これら2点の課題に対応して本章は以下の構成をとる。

1] 香港港の「民営」管理・運営体制の構造─この点については香港港の整備・管理・運営面での、いわば「官民融合」体制を説明することによって、通常イメージされている香港港の「民営」体制、すなわち、監督官庁がコンテナ港湾の管理・運営に全く関与しない「レッセ・フェール」体制とは異なる側面を強調する。

2] 香港港をめぐる環境変化─とりわけ中国復帰にともなう香港経済の「中国化」と空洞化および中国国内のコンテナ港湾間競争への参入を述べる。

3] 環境変化への香港港の対応─コンテナ港湾としての香港港は、本文で詳しく述べるように、監督官庁と民間コンテナ・ターミナル・オペレーターの2つの柱によって支えられている。

 

 

 

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