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そのため、製品価格を払う消費者が物流コスト低下のメリットをうけることができるかどうかは、物流サービス市場の競争状態による。消費者が物流コスト低下のメリットを得るためにも、運輸分野で進められている規制緩和を一層促す必要がある。

また、新方式の導入により、港湾管理者としての地方自治体の財政負担は以前よりも重くなる。仮にコンテナ埠頭の貸付料が補助金の投入によって下げられたとしても、自治体は岸壁整備によってできる在来船用埠頭やその他施設の使用料金を引き上げ、重くなった負担を賄わなければならなくなる。専用埠頭の貸付料だけでなく、港湾料金全体がアジア域内の拠点港と比べて高いことが問題視されている現状で、政策目標としての部分的な料金引き下げの意義は明らかではない。

港湾料金についても、公企業会計方式による正確な原価が把握されない限り、原価を反映した料金設定はできない。いま、ある港湾に最適規模の施設が整備されたと仮定して、正確に原価を把握し、限界的な一単位のサービスを生産するために必要な原価を反映した料金を設定すれば、それは効率的な料金設定といえる2)。十分な需要があるときに効率的な料金設定をすれば、サービスの効率的な利用を実現することができる。効率的な利用が実現すれば、究極的には国民の便益も高まり、補助金を投入して行った公共投資の効果が事後的に認められることになる。

2) 費用逓減下での限界費用による価格設定によって生じる資源配分問題は考えないことにする。

 

現状では、国家的な公共投資については、そのプロジェクトの投資収益率と、公共投資によって生じた便益を事後的に確認する作業がなされていない。港湾整備については、三大港湾に最適な規模の港湾施設が整備されているのかどうか、納税者は知る由もない。港湾投資の正確な原価は把握されず、効率的な料金設定もなされていない。港湾整備後に効率的な利用が実現されているかどうかについて、検証も行われていない。したがって、事後的な政策実施の効果分析が無いままに、国際競争力の強化というスローガンのもと、高規格の大水深バース建設に補助金が投入されるしくみが導入されている。

今後、国の直轄事業として補助金を投入するのであれば、目指すべき国際競争力の具体的な内容と、達成すべき具体的な目標値を設定する必要がある。また、プロジェクトの投資収益率と公共投資の結果生じた便益を事後的に検証し、これを公表する財政上の説明責任が問われるべきであろう。

 

3. 地域政策としての港湾投資の役割

─宮城県塩釜港仙台港区のケース─

 

中核国際港湾に指定された宮城県塩釜港仙台港区は、平成6年からコンテナ貨物の取り扱いを始め、取扱貨物量を急速に伸ばしている。その一方で、地域の産業育成と産業基盤としてのコンテナ湾整備の間に政策的な連携が無く、一般貨物の集貨体制に不安を残している。

 

 

 

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