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第2期の成長期には港湾間競争の激化の中でリスクが拡大するが、次第に自立採算を確保できるようになる。それ以前の意思決定機関(理事評議員会と呼ぶ)は全てに慎重であればよかったが、この時点からはリスク管理が求められるようになり、新規プロジェクト等について実行機関幹部に任せきりにせずに分析を行う必要がでてくる。そして現在が第3期にあたるとする。これは所有者である政府も多額の歳入不足に悩み、従来対価を要求してこなかった付帯サービスまでの費用回収をはかり、場合によって他部門への納付を考慮する時期である。具体的には、1980年代終わりから90年代にこのような状況になった。

 

(2) 国際的経営環境の変化と港湾管理者

Heaver(1995)によれば、港湾政策は国際的にも以下のような転換に迫られている。

近年、英国、ニュージーランド等で大きな政策転換があったが、港湾を他のセクター同様にみなす見方は稀であり、英国の民営化においても同様である。港湾における政府介入の理由は、港湾適地の限定性、投資の不分割性、背後圏の自然的形成にあり、重複投資を回避するための介入が行われてきた。耐用年数の長期性のためにいったん過大投資が行われると問題が深刻になっている。

その中で生じた変化として、専用使用の増加とターミナルの固定性のために、港湾が少数の利用者や特定のロジスティクス・システムに対応する必要が生じ、ターミナルへの民間投資が増大した。また海陸両方の輸送の効率化により港湾・航路間競争が増加し、港湾の地理的独占の範囲が縮小した。投資の固定性により(バース貸し)契約が長期化し、ターミナルがロジスティクス・システムのハブとしての役割も持ちはじめた。

米国では、鉄道会社による港湾事業支配を排するために、公共セクターの港湾管理者が設立された一方で、ターミナル-オペレーターは、最近見直し論議にあるものの海運同盟同等の反独占法適用除外を享受してきた。

カナダにおいては、1983年港湾公社法によって採算可能性のある大規模港湾に対し、過剰投資競争防止のための計画承認を条件として、地方港湾公社の設立が許可された。 ニュージーランドでは、港湾管理者の特殊会社化が行われ、国際港湾13港中9港は完全に、4港は大部分が自治体所有の独立組織とされたのち、自主的民営化に向かった。

全体として、国際的に、地方分権と競争的環境への対応が趨勢となっている。しかし自治体による意思決定の下では自治体間競争の過程で港湾施設の過剰能力を発生する危険があり、課税権がこのことを助長する。

全国的港湾政策の課題としては以下があるという。

a. 代替的港湾選択の可能性によって、港湾に差別的補助が行われた場合の悪影響は深刻化しており、問題が国境を越えて生じている。このため国際的政策調整の必要が生じている。

b. 個別港湾の独立採算を保証することによって大局的には内部補助が制約され、競争を通じて、港湾は荷主のロジスティクス選択に対応しなくてはならなくなる。営利的基準の下では、過剰投資は減る。

 

 

 

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