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第6章

港湾管理制度の改革と民営化の方向性

 

1. わが国における港湾料金

 

わが国においてユーザーにとっての港湾コストに占める港湾管理者が設定する料金の比率は1割程度と余り大きくないが、港湾のあり方を考える上で管理制度のあり方、ならびに港湾管理者の効率改善インセンティブや港湾管理者間競争は看過できない基本的問題である。またそのような観点から港湾料金問題を考える必要がある。港湾管理者の設定する港湾料金においては、例えば係留施設使用料については八大港統一料金が設定されてきた。利用実態に即した料金体系への移行が始まっているが、地方自治体の条例主義のフレームワークの下では柔軟な対応が難しいことや、港湾管理者間カルテル是非の問題は依然残されている。本来のあり方として、港湾管理者は料金設定の結果としての利潤を通じて稼動率の評価や投資の決定を行うべきであるが、会計方法の限界もあってこのようなメカニズムが十分に機能してこなかった。極端にいえば、稼動率の低い施設を建設しても、これまでは(独占力のある)当該港全体のコストの中に薄めてしまえば収入による回収が可能で、また港費のある程度を占める統一料金によって国内他港との間で料金格差が生じ競争上不利になることもなかった。このような港湾自体のコストと料金の構造は、港湾物流事業にとってかなりマイナスの影響をもっており、港湾の所有-管理形態の適正化を通じて港湾物流業の活性化が促進される余地は相当大きいと考えられる。

 

2. 港湾管理者を取り巻く制度環境の変化

 

(1) 港湾管理者の位置づけの変化

Dowd(1996)は、様々な類型の港湾管理者をふまえたうえで、港湾管理のライフサイクルの中での展開を指摘している。

すなわち、第1期の事業開始時には、補助金や一般目的起債の援助を受けて投資を集中的に行ってきた。

 

 

 

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