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高麗海運は日本の東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、千葉、細島、徳山、高松、福山、広島、新潟、直江津、富山、金沢、舞鶴、敦賀、境港、苫小牧、酒田に配船している。これら地方港からLCL貨物を、香港中継貨物とシンガポール中継貨物に分けてプサン向けに送りだし、プサンでデバンニングすることなくそのまま香港・シンガポールにリレーする。そして香港・シンガポールでそれぞれ南中国向け、東南アジア・インド洋向けといった形で仕向け地向けごとに再混載して送りだすというものである。

これら韓国船社による地方港発LCL貨物の取り扱い開始の背景には日本─韓国あるいは日本─その他東アジア間のコンテナ・インバランスの問題がある。周知のように、アジア通貨危機を契機としたアジア経済不況は、日本以外の東アジア諸国の輸入を極端に減少させた。その一方でこれら東アジア諸国は経済危機打開のために輸出ドライヴをかけている。その結果、日本に空コンテナが滞留する一方で、その他の東アジア諸国では空コンテナの不足が深刻になっている。当然、日本から東アジア諸国へ空コンテナを回送しなければならないため、空気を運ぶよりも少しでも運賃がとれるものを運んだほうがメリットがあるという判断から日本地方港発LCL貨物の取り扱いが開始されている面は大きい。

 

3) 五大港と地方港の新たな対立

ただし上記の東アジア主要港での多国籍混載を行う場合を含めて地方港が地元LCL貨物を取り扱うようになると、当然、五大港との間で当該貨物の新たな集荷競争が発生することになる。今まで、タイプ4]の貨物の集荷において生じていた五大港─地方港間競争あるいはこの競争を通した五大港─東アジア主要港間競争が、タイプ3]の貨物の集荷にも拡大するからである。この新しい集荷競争の構図は、五大港が現在持っている競争力を根本的に脅かすものである(図表I-4-14)。このように現在の日本のコンテナ港湾の空間的配置は、五大港の港湾物流サービスの維持・強化と地方港のそれがトレード・オフの関係にあるというきわめて非効率的なものである。

 

図表I-4-14 新たな五大港─東アジア主要港間競争の展開

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