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すなわち、輸出入にかかわる各種の書類提出義務や通関、検疫・防疫等の事務処理を簡便化することによって、これらのコストの削減をはかることができることと、これら業務にかかわる各種官庁(税関、検疫・防疫所等)の事務処理体制のフルタイム化といった形で事務処理時間を柔軟化することに対するニーズが高い。これらの措置をとることによって大荷主は港湾物流のスピード・アップや輸送の多頻度化および港湾物流コストの削減が可能となる。

(b) 大荷主による港湾物流サービスの内部化

ところで大荷主が港頭地区における物流機能を極小化させる傾向があることは、大荷主がコンテナ港湾を選択する場合、かなり高い自由度を持つことを意味している。というのも大荷主はその大量貨物を輸出入する際に、港頭地区においてバンニング・デバンニング、梱包、混載・仕分けといった作業を行う必要がないケースが多いからである。これらの作業のほとんどは大荷主の自社工場や倉庫(あるいはそれに準じた倉庫)で行われるのが通例である。言い換えるならば、従来、港頭地区で行われていた港湾物流サービスを自社内部化しているわけである。特に低価格の輸入品に関しては、日本における仕分けや値札付け、検品といった流通加工は人手がかかるため人件費が高い日本での作業を極力カットする方向にある。その結果、大荷主は港頭地区の港湾物流サービスに対する依存度を低めつつあり、港頭地区における港湾物流サービスはますます空洞化する可能性が高い。

(c) 港湾物流サービスの内陸化と日本のコンテナ貨物の港湾素通り問題

 このように大荷主にとって必要とされるコンテナ港湾における港湾物流サービスのタイプは、主にFCL貨物の迅速・低廉な取り扱いという画一化・標準化されたものに限定されることになる。言うまでもなく、この大荷主の大量FCL貨物のコンテナ港湾通過が、いわゆる「コンテナ貨物の港湾素通り問題」の重要な要因の1つをなしている。

 図表I-4-1は日本の輸出入コンテナ貨物のバンニング、デバンニング場所の変化を時系列的に見たものである。メーカー倉庫でのコンテナ・バンニング、デバンニングは輸出入とも増えておりまた荷主倉庫でも輸入貨物において同業務が行われる傾向がある。当然、これらのコンテナ貨物はメーカー倉庫、荷主倉庫でFCL貨物化されているため、港頭地区においては単なる通過貨物になる。その結果、メーカーを含めた荷主は最低限のコンテナ港湾施設と当該コンテナ貨物を円滑に輸出入できる航路を持つ港湾ならば、どこでも利用できることになる。このことが地方港においても、大量FCL貨物に関してはコンテナ物流は行いえる前提条件となっている。そして多くの地方港が大荷主が持つ大量のFCL貨物に依存した、いわば大荷主専用港湾となっている。

 

図表I-4-1 コンテナ・バンニング、デバンニング場所の変化(トン・ベース)

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出所:津守[1997]p.139

 

 

 

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