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1) 「誰のための港湾か?」─荷主対応型港湾への転換

当然のことであるが、「誰のための港湾か?」という問いかけに対しては、コンテナ港湾を利用する荷主を第一義的に想定するべきである。その上で、荷主に対してより良質な港湾物流サービスを提供する港湾物流業者の立場を考慮するというのが常識的な考え方であろう。ただし後述するように、荷主は大荷主と中小荷主では港湾に対するニーズが異なるため一括して分類できないこと、および「荷主」という概念の中に既に国際物流活動を行っている荷主だけでなく将来的に当該活動を行える潜在的荷主をも含めること、さらに「荷主のニーズ」といっても最低限の社会的規制を考慮しなければならないことに留意するべきである。

 

2) 「何のための港湾か?」─地域経済振興のインフラとしての港湾

港湾および港湾機能とはそれのみで自己完結的に存在しているわけではなく、後背地の産業に対して港湾物流サービスを提供することによってのみその存在意義を示しえる。すなわち、後背地産業の振興にどれだけ役に立つのかという点にこそ港湾の重要性は求められるべきである。特に近年、物流活動が海運、港湾物流、陸運等の個々の物流活動としてではなく、市場(販売)─開発・計画─生産─調達全てを含んだ総合的な企業活動の中で捉え直されるようになっている。このような一般的状況を考えるならば、港湾は荷主のサプライチェーンの一部を構成する物流拠点の1つとして明確に位置づけ直されなければならない。その際、問われるべきことは後背地に立地する企業の効率的な事業展開にとって効果的な港湾物流サービスを当該港湾が提供し得るかどうかという点である。

日本の港湾に関して言うならば、日本企業の多国籍化あるいは日本経済のグローバル化の進展によって、国境を越えた企業活動を行う顧客(=荷主)のニーズに対応した港湾サービスの提供は、ますますその重要性を増しつつある。またコンテナ港湾はもともと一般貨物を取り扱う港湾である。つまり工業港のように特定荷主対応あるいは特定荷主専用型の港湾ではなく、不特定多数の荷主を対象に港湾物流サービスを提供することができるという特徴を持つものである。したがって国際業務に従事している多種多様な荷主に対する港湾物流サービスに、本来ならば、対応可能な港湾である。さらに日本経済が東アジア域内水平分業体制の中に編入されている現在、水平分業体制を支える物流ネットワークの主力であるコンテナ物流とその拠点であるコンテナ港湾はよりいっそうその機能を期待されるものとなっている。

 

(3) 本章の論点

ところで上記3つの分析視角を採用した場合、論点となるのは、次の3つである。すなわち、

1] 集荷すべき貨物のタイプ

まず第1に地域産業の振興を考える際に、どのようなタイプの(荷主)企業を想定するべきなのかという点である。

 

 

 

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