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第4章

港湾の「競争力」と地域経済

 

1. 問題の所在

 

(1) 背景

阪神・淡路大震災(以下、大震災)による神戸港の機能停止およびその後の神戸港のコンテナ貨物集荷力の低下をきっかけとして、日本の港湾政策のあり方の是非を含めた形で日本のコンテナ港湾の「競争力」とその「喪失」が盛んに論じられている。しかし、その多くが日本におけるコンテナ港湾の整備の目的あるいはコンテナ港湾の本来的役割を明確にせずに、日本のコンテナ港湾の「問題点」を数え上げることに注力している。もちろん、日本のコンテナ港湾にはさまざまな問題点があることは事実である。例えば、多くの論者が指摘するように、80年代後半以降の日本のコンテナ港湾施設の過剰かつ無軌道な建設はコンテナ港湾の最適配置からほど遠いだけでなく、港湾整備負担に関しても今後に大きな問題を残しており、当然、批判されるべきである。しかしこのような一般的な問題は論外として、さまざまな問題点があるということは、その背後にこれらの問題点を感じているさまざまな立場の港湾利用者がいるということでもある。したがって日本のコンテナ港湾の「競争力」とその「喪失」を問題にするならば、誰にとっての競争力およびその喪失なのかという視点を明確にしなければならない。重要なことは、コンテナ港湾間の単純な競争力比較ではなく、日本のコンテナ港湾の利用者の特性を考慮した上で、日本のコンテナ港湾機能の維持・確保・強化の方法を模索することである。そのためには明確かつ適切な分析視角と着実な実態調査が必要とされる。

 

(2) 本章の分析視角─「誰のための」「何のための」港湾か?

そこで本章では下記の2つの分析視角から日本のコンテナ港湾の「競争力」とは何かを整理し、日本の港湾の機能回復・維持・強化にとって、より適切な処方箋を書くための基本的方向および今後検討すべき課題を提示することにしたい。そしてその中で関西諸港湾の整備方向あるいは機能集積の方向を考察することにする。2つの分析視角とは以下の通りである。

 

 

 

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