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輸入物流においては、とりわけ日本の経済発展の動向をどれだけ背後地の産業構造に生かすか、またそれをどれだけアジア経済の成長と結合するかが重要である。

大阪港の輸入物流は、アジアとの水平分業をGDPの一面的作用のみで推進し、それを取り巻く環境も恵まれているとはいえない。それにも関わらず、背後地である大阪の地域経済規模が大きいため、著しい競争的圧力を神戸港に与えている。

このような大阪港からの競争を被る神戸港の輸入物流においても、コンテナ化率でとらえた港湾サービス機能は作用せず、その競争に対して神戸港は専ら経済的諸要因の堅実な機能によって対応している。しかしその結果、神戸港は輸出で見られたのとほぼ同様の競争力の低下に直面していたのである。

輸入物流においては専ら背後地の経済的な側面が港湾の競争優位を形成するという現実は、隣接する神戸港と大阪港が分離独立した経営体として運営されることによって発生する機会費用を膨大なものにしている可能性が大きい。相互の連携を模索した事業部制的経営、さらには合併による統一的経営へと進む方がお互いメリットになると考えられる。

輸出物流においては、各港がコンテナ埠頭やターミナルの整備を進めることが、競争力を増加する戦略として有効であることが明らかになっている。この点は、輸入物流との大きな相違点である。しかもそこでは、神戸港の相対的な優位が明らかになっていた。他方、港湾を取り巻く経済環境が輸出物流に及ぼす作用も、有効かつ合理的に競争優位を決定している。この経済的要因の作用については神戸港と大阪港では特別の差は見られなかった。それにも関わらず、神戸港の市場支配力は大阪港からの競争に直面して低下傾向にある。その原因は大阪港の対ASEAN輸出物流に見る決定因の非合理的作用から類推できる。神戸港は、大阪港に対して競争圧力を全面的にかけることで、優位を維持しようとするが、大阪港はその圧力を部分的に逃れる工夫をしているのである。このような競争は、競争のメリットを生むよりは、むしろまさに資源の浪費に繋がっている。輸出物流の面からも神戸港と大阪港の合併に向けた取組みが要請されている。その動向がまた西日本に位置する北九州港などの発展戦略の立案のあり方にも影響を及ぼすであろう。

神戸港と大阪港の連携のメリットを明示的に論じるには、港湾行動の現行メカニズムを論じた本節の議論をベースに、各種の経営形態におけるバーチュアルな戦略効果を算定しなければならない。本節の議論はそのための出発点を提供するものである。

 

3. 神戸港と大阪港の連携の形態と戦略効果

 

前節の考察において導かれた重要な結論は、港湾サービスのあり方が港湾物流に影響を及ぼすのは、輸出物流に限定されていたことである。本節では、この事実に基づいて、神戸港と大阪港の連携の形態と戦略効果の関係を論じる場合には、輸出物流にどのような変化がもたらされるのかを判断の基準にして、好ましい連携のあり方に接近しよう。

 

 

 

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