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明らかに大阪港は神戸港と総合的に競争関係にあり、この競争構造自体は確実なメカニズムを持っている。

では大阪港は、港湾サービスで神戸港より劣るにも関わらず、何故に神戸港に対して競争を仕掛けられるのであろうか。その原因は、神戸港との競争を意識した資源の浪費に近い港湾投資にある。これをベースにしたニッチ戦略的ポート・セールスが、大阪港の競争力の基盤であろう。

 

(3) 輸入物流と港湾の競争関係

1) 神戸港の対アジア輸入物流行動

1] 水平分業の支配する輸入物流のメカニズム

すでに本節(1)において(6)式として掲げた輸入行動の基本モデルに基づいた推定結果(図表I-3-3)では、2つの決定因について符号条件が満足されていない。一つは、本来正の符号を示すべき、日本のGDPとアジア9か国・地域のGDPの比率がすべての国・地域について負の符号を示すという逆転現象である。もう一つは、これも正であるべき日本の卸売物価とアジア9か国・地域の卸売物価の比率がすべての国・地域について負の符号をとっているものである。

このような通常期待される行動とは異なる行動が現れた意味は何か。それは、アジアからの輸入物流が外国物資の単純な輸入行動によって喚起されるのではなく、海外直接投資に基づくアジアとの水平分業によって支配されている状況を示すものである、と理解される。もっともこのような水平分業は、先進諸国とアジア地域の間に一般に成立しているはずだから、アジア地域から神戸港に輸入されたトランシップ貨物もまた、神戸港本来の輸入貨物に対する説明変数の作用を増幅している可能性が高い。しかし本章のモデルでは、本来の貨物とトランシップ貨物の作用を区別してとらえることはできない。

日本とアジアの水平分業に基づく輸入物流を支える日本の海外直接投資の要因は、フィリピンを除いて輸入物流を牽引するドライバー機能を十分に果たしている。またその機能の強度は、国・地域ごとに多様なレベルにある。

さらに為替相場比率も期待された合理的な負の符号を示している。中でもフィリピンとインドネシアからの輸入物流の為替相場比率弾力性は1を大きく上回って、極めて弾力的である。これらの2国からの日本の輸入は、円高・アジア通貨安の関係に基づいて大幅に増加するのである。

2] サービスの中立的機能の下で全体的変革を要請される港湾経営

さて神戸港のコンテナ化率は、その係数のt値が低いため、輸入物流に対して実質的な機能を何等果たしていない。これから見る限り、神戸港の港湾サービスレベルは輸出物流を強く規定していたが、輸入物流に対しては中立的である。唯一の例外は中国との間の物流ネットワークにおける神戸港のコンテナ化率のもつ大きな輸入促進作用である。

 

 

 

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