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それは直接投資と水平分業時代の輸入行動の特異性を基本的に体現している限りにおいて、これこそ合理的な関係であると見られる。そして本モデルではトランシップ貨物の輸入(実質的にアメリカなどによるアジアからの輸入)を説明する要因を特に設けなかったため、この作用が神戸港のケースでは一層増幅して現れる可能性がある。

一方、神戸港の輸入コンテナ化率の上昇は、港湾サービスの差別化を通じて、一般的には、神戸港の輸入港としての競争優位をもたらすから、b5も正になる。

神戸港のコンテナ貨物集中度は輸入についても最近低下傾向にある。この集中度の低下は、神戸港のアジアからの輸入量の減少をもたらす一方で、大阪港のアジアからの輸入量を逆に増加させるであろう。したがって神戸港では、b6は正になるが、大阪港では負になると見られる。

 

(2) 輸出物流と港湾の競争関係

1) 神戸港の対アジア輸出物流行動

1] 推定結果の見方

さて、先に掲げた(3)式の基本モデルを利用した、神戸港のアジア9か国・地域に対する輸出物流行動関数の推定結果は、図表I-3-1に掲げられている。ここでは、推定の基準国として韓国を選んだうえ、10年間にわたるサンプル90のパネルデータを用いた。基準値から乖離する計測結果を示した国・地域については、調整値の欄にその乖離値を示し、その場合には基準値と調整値の合計が調整済値の欄に掲げられている。この推定された基準値としての係数は、(3)式が対数線型1次式で特定化されていたから、神戸港の対韓国物流の決定因弾力性を示す。また調整済値は韓国を除くアジア8か国・地域物流の決定因弾力性を表している。

推定結果が基準値から乖離しないケースでは、調整値の欄は空欄になっており、調整済値の欄には基準値が挿入されている。またすでにふれたように、(3)式に基づくパネルデータの推定では、9か国・地域の定数項の値は一定で変化しないと仮定されている。したがって基準値からの乖離は行動様式の相違によってのみ発生していると見ている。

2] アジアのGDPに大きく依存する輸出物流

そこで基準値と調整済値の動向を見れば、大部分のケースでは符号条件は合理的に満足されている。日本の直接投資弾力性は、韓国・台湾・香港・シンガポール・中国・マレーシア・フィリピンについては、0.291であり、直接投資の1%の増加が、神戸港のこれらの国・地域に対する輸出物流量を約0.3%増加させることが分かる。これに対して対インドネシア直接投資の物流喚起度は、弾力性で見てその1.5倍に当る0.467である。しかし対香港と対タイに対する日本の直接投資が神戸港の輸出物流を増加する程度は極めて小さく、弾力性はそれぞれ0.040と0.002にとどまっている。

神戸港の対アジア物流を喚起する最も重要な要因は、アジア9か国・地域のGDPである。その弾性値は、トランシップの割合が大きな中国で1.336と最大であり、フィリピンでは1.115、そしてその他の6か国・地域について1.045である。

 

 

 

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