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太平洋市場が行動相違型ラグ反応モデルに類型化されたキーポイントは、まさに西航市場においては、東航市場とは異なって、集中度と複合輸送比率という戦略要因に関して信頼度の高い結果(t値が1%水準で有意)を示している、という上にあげた事実に拠るものである。西航市場では、水平的統合戦略による集中度の上昇は、確実に運賃水準に反映されている。また、複合輸送の可能性を上げる垂直的統合が進めば、運賃が上昇する力をもっている。このように戦略が確実な成果に結び付くのが、西航市場の特徴である。

 

図表I-2-3 太平洋市場の運賃決定関数

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(注1) 係数の下の括弧内の数字はt検定量、その添字a、b、cは係数がそれぞれ1%、5%、10%、20%、30%水準でそれぞれ有意であることを示す。

(注2) RB2:自由度修正決定係数、SE:推定値の標準偏差、DW:ダービン・ワトソン統計量。

(注3) 計測のベースは東航市場である。

 

4) 東航市場における戦略効果の転換の兆し─コンテスタビリティの継続─

従来の考察結果では、垂直的統合戦略が進んでいる東航市場において、この戦略が僅かではあるが、運賃を低下させる機能が確認されていた。ところが本章の分析では、東航市場においても、この戦略が成果に結び付く信頼性は低いとはいえ、その作用は好ましい方向に機能している。東航市場においても、ロジスティクス戦略対応行動としての垂直的統合戦略の有効性を再認識すべき時期が近付きつつある。

 その一方で、東航市場の水平的統合は、その機能への信頼性はまだ低いけれども、期待される方向に作用している。この信頼性を厳しくゼロと査定すれば、東航市場の構造は、未だコンテスタブルな状態にあるといえるし、現状もそれに近いであろう。

 

 

 

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