日本財団 図書館


SCMの観点からは、Bowersox(1990)がロジスティクス・アライアンスと呼ぶ荷主企業と物流業者の戦略的提携が有利であるが、実際にそこまで踏み込んでいる荷主企業は少ない。大手企業の場合は、なおも自社でロジスティクスを管理しようとする意向が強く、TPLへの全面的なアウトソーシングは躊躇しているようである。しかしながら、ロジスティクス・アライアンスの成功事例が続き、TPL事業者が成長を続ければ状況は変化する可能性もある。

TPLサービスの提供では、荷主企業との間に情報システムを整備することが不可欠である。自社開発の場合と既存ソフトウェアをカスタマイズする方法とがあり、後者が主流になっている。その理由としては、TPLを対象としたソフトウェアが各種発表され改良が重ねられていること、好況が続き自社開発するためのシステム・エンジニアを確保することが困難なことがあげられる。

 

(4) TPLの類型

1) アセット型とノンアセット型を基本とする類型

TPLの類型として、しばしばアセット型とノンアセット型があげられる。アセット型がトラック、倉庫等の資産を保有するタイプであるのに対し、ノンアセット型はこれらの資産を保有しないタイプである。

しかし、各種の資産をリースで利用している場合や一部の資産のみ保有している場合などがあり、厳密な区分は難しい。また、アセット型の場合でも、自社の資産にこだわらず、他社の資産を利用する場合が多い。自社の資産の稼働率にこだわると、TPLとしてサプライチェーンの全体最適を行うことが困難になるためである。

この点を考慮し、Muller(1993)はアセット型をアセット・ベースド(Asset-based)とインテグレイテッドプ・ロバイダー(Integrated Provider)に二分し、ノンアセット型をマネジメント・ベースド(Management-based)とアドミニストレーション・ベースド(Administration-based)に二分している。

アセット・ベースドは、自社の資産のみを利用してTPLサービスを提供する事業者である。代表例としてトラック輸送大手の子会社J. B. Hunt Logistics、Nationwide Logistics Corp.等があげられる。

インテグレイテッド・プロバイダーは、自社で資産を所有するものの必要に応じて他社のトラックや倉庫等を利用する事業者である。代表例として、航空貨物会社の子会社であるAirborne Logistics ServicesやBusiness Logistics Service、トラック会社の子会社であるBest LogisticsやExcel Logisticsがあげられる。

マネジメント・ベースドは、通常ノンアセット型といわれるものと共通で、フォワーダーやコンサルティング会社が該当する。

アドミニストレーション・ベースドは、運賃支払、データ管理・分析のように特定の事務管理サービスを提供するものであり、銀行の子会社やコンサルティング会社が該当する。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION