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ロジスティクス機能は、SCMで重要な役割を果たしている。企業がもっとも競争力が発揮できる分野(コア・コンピテンス)に集中して連携するようになり、ロジスティクス機能のアウトソーシングが増大している。ロジスティクスサービスの提供者側は、SCMのアウトソーシングの受け皿であるサードパーティ・ロジスティクス(TPL)に新たな事業として取り組みはじめている。

国際物流のなかでフォワーダーは、貨物の混載、通関、流通加工等の機能を果たし、荷主の物流効率化で重要な役割を果たしている。荷主の国際化とともにフォワーダーも海外進出を拡大し、現在ではアジアを中心に拠点を整備している。荷主企業の国際物流ニーズに対応し、世界各地を結ぶ複合一貫輸送サービスを提供している。最近では、ノンアセット型のTPL事業者として荷主のSCM効率化で重要な役割を担うことが期待されている。フォワーダーだけでなく、船社、航空貨物会社もTPLに取り組み始めている。国際競争入札により海外のTPL事業者との競争を通じてTPLが導入される場合もあり、海外のTPL事業者と直接的に競合するケースが増えている。日系フォワーダーや船社にとってTPLへの取組は急を要する課題となっている。

 

第2章 荷主のロジスティクス戦略に対応するコンテナ船業の機能展望

本章では、コンテナ船業の産業組織の構造変化と戦略の変化を、アジア・太平洋、大西洋、アジア・ヨーロッパの三大市場における運賃決定の態様の実証分析を通じて把握して、荷主のロジスティクス戦略に対応したコンテナ船業の態勢作りが遅れている事を明らかにする。とりわけコンテナ船業の世界規模での水平統合戦略であるアライアンスが、垂直統合戦略と結び付いた相乗的効果を上げるためには、グローバル市場で単一の意思決定のもとで経営を行うというグローバル・マネジメント指向を伴う必要がある事を実証する。コンテナ船業がネットワークのプロバイダーとして行動する限り、グローバル・マネジメント指向はこの時点で究極のゴールとなろう。

 コンテナ船業がこのトレンドに乗ることは、産業の次世代ライフサイクルの創出のためには不可欠の選択である。コンテナ船業は、下部構造にネットワーク・プロバイダー機能を、上部構造にシステム・オペレーター機能をもち、上部構造が下部構造を飲み込みながら発展する仕組みを21世紀に向けて構築するべき時に来ている。しかしその際、その様なキャリア型のサービスの拡充が、先に見たバーチャルに結実したグローバル・マネジメントの成果と何等かの形で関係していると見做す事ができるならば、顕著に改善した垂直統合効果は、実はシステム・オペレーターとしての付加価値サービスの創出プロセスに関わるものであるとみなせるのである。今後展開されると期待されるグローバル・マネジメントの要諦は、システム・オペレーター機能の構築を図ることである。

 

 

 

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