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本報告書の要旨

 

本報告書は、平成9年度の研究調査「国際競争下の拠点港湾に関する研究調査」の成果をもとにして、アジア域内の拠点港湾間で繰り広げられている港湾間競争のもとで、わが国の港湾の物流システムに生じている経済的な影響を制度的、計量的な側面から分析した結果をとりまとめたものである。本調査の特色は、荷主の物流ニーズという視点から阪神圏の拠点港湾を念頭におき、港湾物流システムの効率化、拠点港湾の整備・管理・運営のあり方、物流システムの効率化による地域経済の活性化について分析を行ったことにある。

本報告書は、第I部において荷主、フォワーダー、船社、港湾管理者、地域経済に関する現状分析を行い、第II部において韓国・香港・シンガポール・台湾の4カ所で行ったインタビュー調査をもとに、港湾整備政策、港湾管理システム、民営化の方向性、港湾物流業者の現状等をまとめた。第II部は第I部の議論を補完している。第III部は、荷主、船社、港湾管理者によるゲーム的な状況をモデル化し、経済的な条件を変化させて国内の港湾間で生じる競争についてシミュレーション分析を行い、港湾整備政策の視点から分析結果をまとめた。

物流サービスの効率化を考える際にもっとも重要な要素が、異なる事業者が連携することによって生じるロジスティクス効率化の発想である。今後、わが国において運輸業の規制緩和や情報ネットワークの整備が進むにつれ、サードパーティー・ロジスティクスと呼ばれるロジスティクス・サービスの受け皿ビジネスが成長すると期待される。また、荷主企業のグローバリゼーションとともに物流ニーズが多様化するため、フォワーダーや船社はサードパーティー・ロジスティクスヘの取り組みを急ぐ必要がある。

多様化する荷主のロジスティクス戦略は、船社の経営戦略にも大きな影響を及ぼしている。現在、世界的な規模で進んでいる船社間の提携が効果をあげるには、アジア・北米、大西洋、アジア・ヨーロッパの三大航路について統一した意思決定を行うグローバル・マネジメントの考え方が必要であることを実証する。荷主にとって理想的な港湾の立地とは、優れたロジスティクス・サービスを提供できる少数の輸出用拠点港湾と、それらを基点とする港湾ネットワークである。拠点港湾が競って荷主を取り合っている状況を考えるならば、港湾都市が国際競争に生き残るためには連携・合併による港湾経営の効率化が必要となる。ひとつの試案として、輸出港としての神戸港と輸入港としての大阪港の連携・合併を提案した。

港湾の競争力の源を考えるには、それを利用する荷主の特性を分析する必要がある。荷主が重視するサービスの内容、地域経済と荷主の結びつき、背後地の集貨体制を充実することによって、それぞれの港湾が持っている特性を活かし、地域戦略として港湾を発展させることができる。自治体は港湾管理者としての側面だけでなく、地域産業政策と整合した港湾運営と情報管理に取り組む必要がある。

 

 

 

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