日本財団 図書館


浜渦哲雄氏は、「植民地支配の諸悪を認めた上での話であるが、比較の問題として、各宗主国はそれぞれ特徴ある植民地統治を行った。統治方式の違いは、撤退時の権力の受け皿の有無、宗主国の植民地からの撤退の仕方、さらに独立後の旧植民地と宗主国との関係、それらの国の政治的安定、経済発展にまでつながっているように思える。イギリス以外の宗主権は政権委譲のための受け皿を作る努力をせず、戦後も植民地支配を継続しようとし、ヴェトナムとアルジェリアにおけるフランス、インドネシアにおけるオランダ、アンゴラにおけるポルトガルのように、それぞれの国にとって最も重要な植民地からの平和的撤退に失敗、投資資産も失った。」と説明されている6)

上に述べられたように、英国の統治下にあった諸国とそれ以外の諸国とは現行の公務員制度においても大きな相異がみられる。まず、英国を宗主国とした諸国からみることとする。

英国の統治下にあったインド等の諸国においては、宗主国であった大英帝国が植民地に総督や官僚といった統治者を送り込み、直接統治した。インド文官職(Indian Civil Sarvant 「ICS」という。)を始めとする文官職であって、本国から派遣されたイギリス人が充てられた。これが「植民地型官僚制」である。しかし、徐々にインド人等の現地人に置き換えられていった。これが「官僚制の現地化」である。第2次世界大戦後にそれぞれの国は独立し、現在の「ポスト植民地官僚制」に移行していったが、特徴とした高級官僚制等は引き継がれており、イギリス統治時代からの踏襲である。

【インド】 (英国より1947年独立)

インド文官職(ICS)→官僚制の現地化を進めつつ→全インド職に引き継がれる。

【パキスタン】 (英領インドの一部→1947年自治領パキスタン→1956年独立→1973年新憲法制定(「植民地主義の遺産」というべき官僚制の改革))

パキスタン文官職(少数の支配的エリート層を形成)→(新憲法)→パキスタン統一

グレイド(このなかに実質的にはそっくりそのまま温存)

【シンガポール】 (英領植民地より1957年自治領→1963年マレーシア連邦成立→1965年マレーシア連邦離脱・独立)→行政職(Administrative Service 「AS」という。)群(エーリト群)

【マレーシア】 (1957年マラヤ連邦として独立→1963年マレーシア連邦を結成)

マラヤ文官職(Malayan Civil Service)(イギリス植民地時代において植民地行政の中心的役割を担った。)→(マラヤ化─65年までにほぼ全ての公務員がマレー人)→行政外交職

【ブルネイ】 (1888年英国の保護領→1984年英国より独立)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION