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アジア諸国の公務員制度は、多くの国において、モノカルチュア産業の管理行政を担当する「植民地型官僚制」より、官僚を現地人に置き換える「官僚制の現地化」をはかりつつ、第二次世界大戦後は「ポスト植民地官僚制」に移行し、アメリカ、日本などの先進国よりの援助体制の下で、一般国政のほか、輸入代替工業や輸出指向工業の経営、指導、監督という行政をも担当することとなった。このようなアジア諸国の公務員制度について、開発途上国の行政の2つの特徴点という基準で考察解明することは、この報告書だけでは不十分であると考えるので、これらの国についての政治、行政等の解説書で補っていただきたい。

それぞれの国の歴史については、報告書において多くの頁が割かれていることについては、大西裕氏は「開発途上国が独立する以前の植民地官僚制と当該社会の情勢を知ることである。この2つの要素が脱植民地化によってどのように結び付けられるかが、その後の開発途上国の行政や政治経済構造の性格に重要な影響を与えている可能性が高い。これを踏まえたうえでの研究でなければ開発途上国の比較行政研究は非常に皮相なものになる」と指摘されている4)ことからみても、有意義であり、それぞれの国の公務員を理解する面で十分利用していただきたい。ただ残念であるのは、日本の行政学では、「植民地官僚制」や「当該社会の情勢」についての研究が数少ないことである5)

我が国の公務員制度の理解のためのアジア諸国についての比較公務員制度の研究は緒についたばかりであり、ましてやアジア諸国相互間での比較公務員制度の研究は進んでいない。先に述べた2つの特徴点での比較は一つの方式(基準)にすぎない。この比較方式(基準)を含めて比較方式(基準)についてどうあるべきか今後研究(検討)を進めて行く必要がある。

以下、三点に分けてアジア諸国の公務員制度を考える視点について簡単に述べることとしたい。

 

2 宗主国との関連等について

アジア諸国の公務員制度については、数多くの国が、「植民地型官僚制」─「官僚制の現地化」─「ポスト植民地官僚制」という型(パタン)を取っており、アジア諸国の公務員制度を理解するためには、植民地型官僚制時での宗主国がどこであるかが大切である。

11国、1地域を宗主国別に分類すると次のとおりである。

英国─インド、パキスタン、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、ミャンマー

米国─フィリピン

オランダ─インドネシア

仏国─ラオス

日本─台湾

独立国─タイ、ネパール

 

 

 

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