日本財団 図書館


釘は一か所に複数本、同じ「木目」(木質繊維の筋)に入らないよう配置する。

型板は2枚重ねが原則。鎧重ね(斜め張:クリンカー)や3枚は不可。

2)固定した型板に現図を拾う。

「拾う」とは型や定規に墨付けする(差金で垂直に線や点を写し取る)ことを言う。

3)木型を現図より外し、反転して裏打ちする。要領を[図3.1.2 型の裏打ち]に示す。

釘の位置に、鉄板の金床(LH切抜きクズなどのスクラップを利用)を敷き、ここでもトン・カチの2拍子、トンで軽く折り曲げ方向に叩き、カチの一撃で木目に直角に押さえ込む。このとき1)で残していた釘の頭が、板面にピッタリ沈み込んで、型板を裏表から締め付けるのである。同じ重なり位置に複数の釘を打つが、裏打ちでの釘の曲げ方向は、互い違いにして、少しでも作成途中の型の狂いを押さえるようにする。

 

070-1.gif

図3.1.2 型の釘裏打ち

 

余談であるが、この1)と3)の釘打ち裏打ちテクニックが、自ずと実現する釘があった。呉NBC造船部に米国から送られた[図3.1.3型用クレンチ釘]である。

 

070-2.gif

図3.1.3型用クレンチ釘

 

この釘だと尖端断面が矩形のため、どのように打ち込んでも、ひとりでに向きを変えて木目沿いに入り、クサビ状の先細なので、打ち込む間は常に抵抗が増す。したがって一様な叩き方では、釘頭を残して止まり、また木目に沿った結果として、裏打ちは、常に木目を押さえる方向に折れ曲がる。つまり教育抜きの素人でも誰でも同じ出来栄えになるのである。当時は、型釘にまで込められた米国流の合理性に瞠目したものだったが、今になって思えば、この釘は洋式木船の伝統の応用[図3.1.4 クリンカー張りとクレンチ釘]だったようである。

もっとも米国の木型材料は1/4インチ=6ミリ厚の米松板であり、せっかくのこの型釘は、日本の8ミリ厚杉板には使えなかった。

 

070-3.gif

図3.1.4 クリンカー張りとクレンチ釘

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION