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外務省としましても、こうした政治的な声といいますか、流れに沿った形での政策展開が必要だというふうに強く認識している次第でございます。したがって、こうした問題意識の1つの答えとして、借款にもタイド性のものを広げるべきではないかというのが、実は外務省の中にも非常に声としては強おうございまして、今の外務省はタイド派が非常に多いということは言えると思います。

そういったこともあり、経済対策ということで、本件特別円借款は始まったというか、盛り込まれているわけですけれども、過去にも経済対策ということで、ODAが積極的に導入された事例というのはあるわけです。古くは78年の経済対策で実施したプラント・バージの特別円借款とか、あるいは86年の総合経済対策でやったプラント・リノベーション借款、これらもいずれも枠を設けて、特別枠というのをつくって、そういった特定目的のために供与したという事例ですけれども、いずれも非常に消化率というか、うまく使われて、なかなか評判はよかったというふうに聞いておるんですけれども、今回も特別枠ということでやっているわけですけれども、本来的には、ODAとして、枠という発想は我々は非常に嫌っておりまして、すなわち政策的な柔軟性というか、機動性を欠いてしまって、硬直化してしまう。予算が硬直化してしまうのはよくないということから、平時ではなかなかない考え方なんですけれども、こういう状況の中で、通常分のオントップというのを今回はつくったわけでございます。

ただ、これは原則論というか、本質論なんですけれども、ODAという器を使う以上、国内の景気対策の論理だけでODAをゆがめてしまうというのは、本来はやってはいけないと思うんです。返済を伴う以上、途上国の負担というのも考えなくてはいけない。昨今、日本の経常黒字がまたかなり拡大しているという中で、タイド性の借款を増やすということについては、慎重な議論も実は政府の中にございまして、いろいろ紆余曲折はあったんですけれども、いずれにせよ景気対策という観点からの緊急避難的措置という位置づけで、今回、制度として発足したわけでございます。

したがって、今後、具体的にプロジェクトを採択していくに当たっては、冒頭、ちょっと申し上げましたけれども、そのプロジェクトの中に日本ポーションがどのくらいあるのか。そういった点がおそらく重要な基準になるんだと思います。景気対策の観点ということから、即効性が重要ですので、政府としましても、案件の選定から最終的なプレッジ、ディスバースに至るまで、迅速な手続を心がけたいというふうに思っております。

タイドについては、顔が見える援助という、もう1つの正当化の理屈があるわけですけれども、日本企業が受注していれば顔が見えて、日本企業が受注していなければ顔を見えないというほど単純な図式ではないと思うんですけれども、タイド性の中でも、できるだけ日本の関与、貢献というのが、総体として見えてくるように、我々としては引き続き努力していきたいというふうに考えておりますが、具体的には、特にコンサルタント、相手国政府、あるいは相手国政府と日本との接点の場にある役割だと思うんですけれども、こういった部分での役割というか、ここが多分キーになるんだと思います。あとでちょっと申し上げますけれども、調達の部分でのコンサルの役割というのは、特に本件特別円借款においては、重要になってくるのではないかなという気がいたしております。

あと、もう1つ、外国に対して、じゃあ、これをどういうふうに今、説明しているかということを簡単にご紹介させていただきますと、タイドという以上、やはりTPOに応じた説明ぶりというのが工夫される必要があるんだと思います。特にアメリカは、既に年末から我々のところにもやって来て、本件についての絶大なる関心というか、注目をしているわけですけれども、我が国はというか、我々としましては、これまでの円借款のアンタイドの方針には基本的に変更はないというふうに説明しております。すなわち、今回の措置というのは、アジア諸国の経済回復を支援することを目的としたものであり、あくまでも緊急避難的な性格を持っているんですと。したがって、これがパーマネントに定着するということではなくて、地域的にも限定されていますし、あるいは時限も区切られてやっておるんですと。しかも、さっき申し上げたように、今の円借款のアンタイドが対象の円借款に追加的に、オントップで行われるものであると。したがって、今のアンタイドをへこませて、そこにこのタイドのものを潜り込ませるというようなことではございませんということは言っております。

タイドといっても、また後で申し上げますけれども、調達の一定割合というのは、日本以外で生産された資機材、サービスというものを使うということを認めておりまして、そういう意味では、十分、外

 

 

 

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