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国の参入の余地も、そういった最終的な資機材の供給という形では余地はありますということを申し上げております。いずれにしても、我々としましては、国際ルールにきちっとのっとった形で、正々堂々とタイドをしたいというふうに考えております。

ここでいう国際ルールというのは、ご存じのとおりのOECDの輸出信用ガイドラインでございまして、これはもともと日本を包囲するためというか、日本の円借を縛るためにできたというような経緯があるというふうに聞いておりますけれども、我々としては、ルール破りはすべきではないと思っておりますし、ルールを守るというのが、円借款という制度の、言ってみれば信義というか、きざな言い方をすれば、いわばノブレス・オブリージュではないかなというふうに考えております。

他方で、いわゆるコマーシャル・ヴァイアビリティ、いわゆるCVの議論というのが、このガイドラインではあるわけですけれども、昨今のアジア経済危機の中で、このCVについてもかなり本質的な問題というのが出てきているんだと思います。すなわち、現在のアジアは大規模な資金収縮が起きているわけで、そもそもコマーシャリー・ヴァイアブルな事業、プロジェクトというのはほとんどないわけです。したがって、ECGなんかでいろいろキャッシュ・フローの計算をして、このプロジェクトはCVありというような、カテゴリカルに答えが出るような状況では今はないんだと思うんです。そもそもそういう経済リスクが、今、高まっていることに加えて、政治的なリスクもどんどん大きくなってきている状況で、そういったCVの敷居がキンシュ的に高くなってきているという状況の中で、例えば発電分野なんかでも、いっときはIPPという形で、かなり民間主導のプロジェクトがアジアの国々でも動いていたわけですけれども、今は大幅な為替変動の結果、売電価格がドルベースで維持できなくなっているというような形で、投下資本が回収できない状況にあるわけです。こうした状況の中で、従来、ECGで議論されてきたような、いわば理念系のCVがそもそも意味をなすのかという、根本に立ち返った議論をすべきではないかということで、我々は今、通産省さんなんかとも相談しながら、そこのフレームのところで議論を国際的に提起しようではないかということを言っております。

そういった今の世の中、わりと旧来の秩序というか、ルールがわりと流動的になっている状況だと思いますので、いろいろな方面からの声に耳を傾けながら、言ってみれば新しいフレームづくりというのをする絶好の機会だと思うんです。円借款もそういったむしろ新しい発想で、国際的なルールをむしろ日本として訴えていく。円借款自体が国際的に非常に今や希有な援助ツールになってしまっているわけですけれども、それの生き残りのためにも、我々としてはそういった本質的な議論をするチャンスというふうに考えて、いろいろ問題提起をしていきたいというふうに考えております。

また、若干、制度の技術的な点に戻りたいと思うんですけれども、特別円借款の実施に伴う調達ですとか、あるいは施行管理等における公平性、あと透明性の問題について、簡単に触れたいと思います。タイド性の借款を導入するに際しては、この透明性の問題をきちっと確保する必要があるということは、これはいろいろな方からご指摘をいただいておりまして、これは特に借入国の問題、第一義的には資金を受け取る国の問題ではあるんですけれども、そういった途上国内の体制、またOECFのチェック機能、こういった両方から透明性確保のための手続を強化したいというふうに考えております。加えて、入札プロセスについては、これは特別円借款に限らない問題なんですけれども、すべての円借款事業について、応札企業名、応札額、受注企業名、契約額について、閲覧方式による事後公開というのを、今、検討しているところでございます。

こういった方面で、我々として若干、神経質になっている一番大きな理由は、さっきも申し上げたように、円借款という制度自体が、非常に大きな岐路に立っているんじゃないかなというふうに考えているからです。我々としては、上手にタイドを増やしていきたいと実は思っておりまして、今回のようなタイド借款を制度として導入した瞬間に、よからぬ問題が発生したりすると、制度全体が倒れてしまいますし、円借款本体の、通常の円借款自体の運命にも影響しかねないという思いをいたしておるので、この点はぜひとも関係者、ODAの関係者全員で協力していく必要があるんだと思っております。

他方で、いろいろ懸念は指摘される一方で、本件の特別円借款に限って言えば、実施も時間が3年間と区切られております。したがって、そういった緊急性を有しているので、かつ予算・金額も区切られているわけですから、公正な競争を阻害する余地はほとんどないというような指摘もあります。また、プロジェクトの事業費というのは、コンサルタントが基礎の積算を行うことになっておりますし、基金

 

 

 

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