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ている必要あるということから、そこら辺の入り口のところでの整理は早い段階でやっておいてくださいということも、あわせて途上国側には今、伝えているところでございます。

仮に特別円借款で要請をされてきて、取り上げられなかったということになったとしても、自動的にそれがこの年次供与のほうに回されるかというと、必ずしもそうではないので、特別円借款の対象分野とか、あるいは調達条件なんかを十分精査した上で、事前に途上国政府部内の中で整理をするということが重要であるというふうに考えております。

最後に、制度の趣旨として、雇用促進とか、あるいは景気対策ということが眼目でございますので、事業実施はスピーディに行われる必要があると。これは当然のことではあるんですけれども、したがって、案件形成のために時間を要しない成熟度の高い事業、具体的にはFSが完備しているもの。これは通常円借でも当然なんですけれども、可能な限り、DDまで完備されているものがこれで取り上げていくという上では重要だというふうに考えます。緊急経済対策の趣旨にかんがみまして、採択に際しては、日本からのポーション、資機材だとかサービスの調達というのがどのぐらいあり得るかというのも、相当程度、審査というか、採択の際には重視されるというふうに思われます。

以上が、お配りした1枚紙にあまり書いていない、若干、技術的な点の補足でございますが、それでは、タイド化という大きな流れの中で、本件円借というのをどう位置づけているのかという、背景的な話に移らせていただきますけれども、最近、実ほ本件の特別円借款の制度について、いろいろなところで説明をしてくれというか、話をしてくれという機会が多うございまして、同じようなことを話しておりまして、実は皆さんの中に、もう既にお聞き及びのことがあるかもしれません。そういう意味では、重複があるかもしれませんが、お許しいただければと思います。

この制度を、そもそもどこのイチシアティブで、だれが言い出したのかということもよく言われるんですけれども、別にこれは私が言い出したというような、正当性のある言い出しっぺというのはどこにもないんだと思うんです。通産省さんの中では、随分、前から議論があったように聞いておりますし、実は外務省の中でも、去年の夏ぐらいから、アジア経済がそもそも非常に危殆に瀕しているということ。加えて、日本国内が非常に大変な状況になっているということから、日本のODA資金を何らかの形で、そういった両方のニーズにこたえられるような形で投入をしていくということを考えるべきではないかという声がございました。

背景としては、そういうアジアの経済危機とか、あるしいは日本の経済的な不況な状況というのはもちろんあるんですが、もう1つ、ODA予算が、前代未聞と形容しても大げさではないと思うんですけれども、98年度については削減されたという事態があったわけですが、こういった事態に対して、外務省全体としても、非常に危機感があったというのはございます。外交上のリソースとして、特に経済協力というのは、途上国との関係を動かしていく上で不可欠の要素でございまして、そのODAが削られるというのは、我々にとっては致命的なことだったわけです。この流れを何とか食いとめたいという、焦りに近い思いがありまして、このためには、とにかく量を維持する、あるいは量を増やすとなると、やはり日本の企業の参加というのを十分確保する必要があるだろうと。すなわちタイド性のものでないと、当然、そういったことは実現できないという状況にあったわけでございます。

もう1つ、これとの関係があるんですけれども、先般も町村外務政務次官の発言が報道等でも引用されておりましたけれども、ODAがきちんと受け取り国から評価されているのかと。ODA供与によって、日本がどういったリターンを受けているんだと。日本にとって好ましい状況が実現しているのかといった非常に厳しい問いかけが、政治方面、あるいはマスコミ等からも厳しく発せられるようになってきていると思います。これまでは安全保障が強化されるとか、2国間関係が強化されるとか、あるいは国際社会での日本の立場が強化されるとか、こういった比較的、抽象度の高いジャスティフィケーションというか、理由づけを我々としてはしていたわけですけれども、今はむしろ日本企業が幾らもうかるのかと。あるいは日本経済の再生にとってどういう貢献があるのかと、このODAがですね。そういった点が非常に強く求められてきているんだと思います。

そういった現在の政治的、経済的な事情というのは、言葉を変えれば、国益がこういった側面で強調されている時代であり、特に厳しい財政事情の中、税金の使い方について、国民からの非常に厳しい視点があるから、やはりODAも直接的に日本経済、あるいは日本企業に還元するということが求められているんだと思います。

 

 

 

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