(FIG.-21)
こういう事で最終間氷期に現在よりも一段暖かい気候モードが存在した可能性が、かなりある訳ですけれども、一方で、じゃあ後氷期には気候変動が全然無かったのか、それともダンスガード・サイクルに似たような少なくとも似たタイミングの変動というものがあるんだろうか、という事が調べられました。
そうしますと、一番向こう側草色は氷の中のダストの量の変動ですが、後氷期には殆ど一直線になっています。だから氷期の変動の振幅に比べると小さいのだけれども、これをよく拡大してみると数千年周期でダストの量が変動しているのが分かって来た訳です。
それから、そのダストの変動のパターンとよく似たパターンが、実は北大西洋の堆積物中の氷床が運んだ岩屑の量ですね、それの変動にも見いだせた、この茶色の一番手前の奴がそうですけれど。そうすると、これも氷期の振福が大きく、間氷期は殆ど真っ直ぐなんですけれども、それを拡大してみると、やっぱり数1000年周期の変動が出てきた訳です。と言う事でシグナルとしては非常に小さいけれども周期的には非常に似た変動が後氷期にもある事が分かってきた訳です。
(FIG.-22)
―方これは昨日のワークショップで福沢さんがお話されましたけれども、日本周辺の記録を見ても似たような変動が見られる、この福沢さんの研究で、シデライト・パイライトと書いてありますけれども、これは汽水湖の堆積物を調べて、汽水湖の中に海水準が少し上がって海水が沢山入って来るとその海水起源の硫酸イオンが供給されて、それが硫酸還元に拠ってパイライトを作って堆積する。パイライトが多い時期と言うのは海水準が高い時期、パイライトが少ない時期というのは海水準が低い時期という風に解釈される訳です。そうすると、その海水準変動のタイミングが先程、グリーンランドとか北大西洋で見られた変動とかなりタイミングがよく合っている(若干違っている所もありますが)という事が分かってきました。それから、一番手前側は、これは小泉さんがやられた日本海の珪藻化石に基づく水温変化の復元です。そうするとこれは対馬暖流ですね、日本海に入ってくる対馬暖流の強きの変動を見ているじゃないかと見られますが、その変動も良く合っている。そう言う訳で少なくとも日本周辺の中緯度では同じような信号が見られる。一番最後にあるのですが、私達が日本海の堆積中のダストの量の変動を復元しているのですが、その変動も同じように見られます。もう一つ面白いことはそのダストの量の変動の振幅は最終氷期と後氷期でそれ程大きく違わないのです。
(FIG.-23)
という事で、後氷期に於ても数千年スケールの気候変動がやはり存在した。ただ高緯度に於てはその変動のシグナルは非常に弱い、ところが中緯度ではそれ程弱まってない様に見える。これが本当であるとすると、それが意味するものは、究極的な変動原因はひょっとして中緯度、もしくは低緯度にあるのではないか、これもまだQuestionですけれども、そういう可能性があるのです。こうした変動が、氷床とか深層水循環と言ったものとcouplingすると大きく増幅されるのではないか、こう言ったことが考えられる訳です。こういった事をこれからもっと研究して行かないといけないと思います。
(FIG.-24)
今までの事を纏めてみますと
1. 現在は地球温暖化により気候システムに対してストレスがかかっている
2. 間氷期の条件下で複数の気候モードが存在し、その内の1つは現在よりも暖かいモードである可能性が高い。
3. 暖かい気候モードに於ては、西南極氷床が崩壊した可能性があり、この場合は海水準は6m位高くなる。
4. 気候モード間のジャンプは、これは間氷期ではまだ十分明らかにされていませんが、―非常に短い期間で起こっている。
こう言う事が言えると思います。