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3). 開催結果

冒頭に海洋科学技術センター理事長、科学技術庁研究開発局長、文部省国際学術課長より、深海地球ドリリング計画(OD21)について航空・電子等技術審議会で推進すべきとの評価結果を得て11年度予算政府原案に盛り込まれたこと、今後この計画に若い研究者が積極的に参加していくことが重要である旨の挨拶があった。

 

(3.1) 総論(一日目)

21世紀における地球科学の課題と深海掘削の役割について、OD21の評価の外国レビュアーを務めたソロモン教授(ワシントン・カーネギー大学、American Geophisical Union前会長)、平教授(東京大学海洋研究所)、堀田理事(海洋科学技術センター)の講演があった。

地球システムの気圏、水圏、雪氷圏、生物圏、地圏の間で複雑な相互作用があり、特にさまざまなところで水が重要な役割を果たしていること、地球の過去の歴史において生命が地球の熱暴走を防ぐために重要な役割を果たしてきたこと、地球深部探査船と統合国際深海掘削計画がこれからのチャレンジングな地球科学に極めて大きな貢献が期待されることなどが強調された。

 

(3.2) 特別講演「地殻内生命と生命の起源」

パークス教授(英ブリンストル大学)より、これまでの深海掘削の成果として、メタンハイドレートが存在する地層内、及び、高温の地層内で微生物の数が増えること、160度Cの高温で増殖する微生物が発見されていること、地殻内で生命が誕生した可能性があることなどの研究成果が紹介された。

 

(3.3) 「地球温暖化は気候ジャンプを招くか」

氷床掘削で得られた過去の急激な気候変動(気候ジャンプ)についてラングウェイ名誉教授(ニューヨーク州立大学)より、気候変動に及ぼす北極圏の役割と北極圏での深海掘削の重要性について小泉教授(北海道大学)より、中緯度での深海掘削から得られた氷期及び間氷期での気候ジャンプについて多田教授(東京大学)、メタンハイドレート地層の崩壊による環境変動について松本教授(東京大学)より講演があった。

今後、高緯度〜中緯度〜低緯度にわたって氷床掘削、湖沼掘削、深海掘削が協力して気候ジャンプの全体像とそのメカニズムの解明が必要なことが強く印象付けられた。

 

(3.4) 「未踏の地球深部への挑戦」(2日目)

大深度掘削の可能なライザー掘削技術を導入した地球深部探査船に大きな期待が掛けられている「未踏の地球深部への挑戦」というテーマのもと、高橋教授(東京工業大学)より、マントルからのスーパープリューム上昇の問題について、ハワイのホットスポットではマントルよりも融点の低いかつての海洋性地殻の断片が上昇している可能性があることなどが紹介された。

 

 

 

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