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本委員会として、以上の試算内容を吟味した結果、「効果」に関して、気候変動について試算された効果が妥当であるかを確認する方法がまだなく、一方、それ以外にも効果が大きいと考えられるが数値化困難なものがいくつかあることから、科学目的の計画の費用対効果を数値的に評価することは適当ではないとの点で意見を一致を見た。これを踏まえて議論を重ねた結果、本委員会としては、数値化できない効果も含めて判断すれば、本計画の費用対効果は十分大きなものであると推定される。

 

3.3.2 補足事項

本委員会における議論のうち、評価結果自体に影響するわけではないが、今後の計画推進上留意すべきと考えられる事項は以下のとおり。

 

(1)技術的妥当性及び開発の進め方

水深2,500m級は、現時点におけるライザー掘削の世界最大水深であり、まして4,000mの水深における掘削は大きな技術的挑戦である。中心的技術であるライザー技術に関し、例えばライザー管を海底から切り離した直後のライザー管の異常な挙動の防止、荒天中でライザー管を掘削船から吊り下げた状態での挙動安全など今後さらに信頼性を高める努力がされるべきである。さらに稼働時の効率向上のため自動制御を応用してライザー管の挙動を制御することや、新しいライザーコンセプト等の新しい技術にも常に注意を払い、実用化の見通しが立った場合に、その取り入れを可能にする柔軟なシステムとすることが望ましい。これに関連して、レビュアーの一人から、ライザー技術に関し、常に革新的な技術開発に関心を持って行かなければ技術の陳腐化の恐れがあるとの指摘があったが、これには上述のような対応で応えられるであろう。

 

(2)資源配分のバランス

これからの時代は、科学技術領域において従来にもまして戦略的に投資を決めるべきであり、意識してメリハリをつける必要があるのであって、その結果、従来のバランスが変わるといったことはむしろ望ましい場合もある。そのような大きな変更を含む政策決定には現状とは異なる決定機構と手続きが必要であるとの議論があった。

 

(3)研究体制

掘削船の運用とプロジェクト推進の中核となる研究拠点について、今後の行政改革の動きを積極的に先取りし、運営上の自立性・柔軟性を有する組織を当事者が具体的に提案すべきとの議論があった。

また本計画は、大学・試験研究機関等に所属する研究者を含め、広範囲な人材が総力を結集して取り組むべき問題であり、現在の体制を一層強化するための方針を立てるとともに、幅広い研究者の創造性を活かせるような研究体制についても併せて構築する必要がある。同時に、研究計画に関しては繰り返し議論することによって、研究者一人一人の意識を具体的研究計画に集中させることも忘れてはならないとの議論があった。

 

 

 

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