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(3)資源配分のバランス

資金、研究設備といった資源配分のバランスについても、どのような方法により評価するかについて議論があった。

計画提案者から、

・本計画の予算規模は、同等の予算規模である地球観測衛星などのプロジェクトと比較しても耐用年数が約25年であることを勘案すれば、突出したものではない。

・本計画は、地球の統合的理解という目的から、他の観測手段、モデリング研究、基礎研究、陸上掘削等と連携しつつ推進すべきものであり、言い換えれば、地球科学全体の取り組みのなかで資源配分のバランスに十分な配慮を行うことを前提としている。との説明があった。

これらを踏まえて、本委員会としては、資源配分のバランスの評価に代えて、本計画が地球科学技術全体の中で他に代替手段のないものであって、かつ、緊急に取り組むべきものであるかどうかを評価することとした。

 

(4)研究体制

現在のODPのもとでは、日本からの年間乗船機会が約12人であるものが、IODPの二船体制のもとでは約100人に増大することに対し、本委員会では、国内の研究者層が十分にあるのかとの懸念が示された。さらに地球深部探査船の建造が、もっぱら外国の研究者の研究機会の増大をもたらし、日本人研究者が十分な成果をあげられない恐れがあるのではとの懸念が表明された。これに対し、計画提案者からはIODP国内連絡委員会研究体制ワーキンググループで提言された研究体制の在り方に関する報告が紹介され、また、外部専門家である多田助教授(東京大学大学院理学研究科)及び平教授(東京大学海洋研究所)からは大学関係者におけるこれまでの研究者の更なる組織化へ向けた対応状況などの説明を受けた。

これらを踏まえて議論を重ねた結果、3.2.4(2)のとおり現時点においても十分な研究者層が存在すること等を認識した上で研究体制整備についての留意点を特に掲げるとともに、航電審及び同地球科学技術部会に評価結果を報告するに際して、関係省庁・機関で必要な措置が取られるよう強く要請することとした。

 

(5)費用対効果

始めに計画提案者より、本計画の費用対効果の試算が提示された。そこでは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第三作業部会で、大気中二酸化炭素が産業革命以前の2倍になった状態をベンチマークとして推定された世界の年間被害額(世界総生産GWPの1.5〜2%)をベースとして、特に破局的な気候変動による年間被害額(GWPの6%)が、本計画の科学的成果によってどの程度軽減されるかを算出し(総合的な期待値を被害額の0.06%と仮定すると2.6〜3兆円)、それを主たる「効果」としている。これは、掘削船の建造及び15年間の運用等に投入する「費用」(総額3227億円)と比較して十分に大きいが、このような試算では将来の被害額及びそれ対する効果についての不確実性が大きい。そこで、国際的に高く評価されているODPに対し全く同じ前提条件で費用対効果を試算し、その結果よりも本計画の試算結果が大きくなったことから、本計画の費用対効果が十分に大きいとしている。

 

 

 

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