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掘削業界においてはウェルコントロール作業中にハイドレートが生成し、キル・チョークラインが閉塞されてしまうと言う問題が重要な課題となっている、海洋掘削における天然ガスハイドレートの生成が文献(参考文献1)に述べられている。近年、大水深掘削の計画立案時には、海底面付近の圧力と温度状況が天然ガスハイドレートの生成が起こりやすいと言う理由により、天然ガスハイドレート生成問題がより注目されるようになってきた。そして海底面に存在する状況下でのガスハイドレート生成を抑制する技術の確認に焦点が絞られている。

本論文ではガスハイドレート抑制の問題点と熱力学に着目したことから、ガスハイドレートの安定性と動的抑制に関係する項目は含まれいない。

 

Laboratory Investigation

ガスハイドレートが生成する状況に関する実験室における研究は数多く実施されている。研究者は流体の化学的性質の影響と、どの抑制物が生成抑制に有効に働くかを確認した。天然ガスハイドレートが試験容器内で生成する過程を図1に示す。

研究者は、最初のクラスレート結晶が現れる温度・圧力の組合せを決定するよりも、より早くクラスレート結晶を生成させてクラスレート結晶が「溶解」するように温度・圧力を変化させることを好んだ。文献では解離点(Dissociation Point)とか熱力学点(Thermodynamic Point)と呼ばれるガスハイドレートの最後の結晶が溶解する温度と圧力は、最初の結晶が生成するのと同一である。

点Aにおいて、研究者は既知の組成を持った既知量の天然ガスを、組成が既知である流体が満たされている試験容器内に圧入する。そして温度を徐々に降下させ、その結果として容器内の圧力も減少する。点Dの周辺でハイドレート結晶が生成され、さらに容器内の圧力が減少する。しかし、この点でのガスハイドレート結晶の生成を目で見ることは困難である。点Bに到達するまでの温度降下に伴い、ハイドレート結晶が生成されることで圧力は減少し続ける。この点で、ガスハイドレート結晶の生成が完了することに伴い、圧力は急激に減少する。点Cにおいて圧力の減少は安定する。この点において、容器内の温度を上昇させ「溶解」過程を開始させる。温度の上昇に伴い固体のハイドレート結晶が気体の状態に戻り、容器内の圧力は初めはゆっくりと、そして最後には急激に増加する。点Dにおいて、最後のガスハイドレートの結晶が溶解し、容器内の圧力増加の加速度は、試験の開始時に見られたのと同様なゆっくりしたものになる。点Dの温度と圧力が、研究者の熱力学実験の主目的である。

様々な温度、圧力、ガス組成における解離点(点D)の研究により、以下の一般的な結論が得られた。

・ 塩分濃度の増加はガスハイドレートの生成温度を降下させる。

・ 高圧下においては、32°F(0℃)以上の温度でもガスハイドレートが生成する。

・ 研究された圧力範囲内において、解離点Dにおける温度と圧力の変化は、直線近似を用いて精確にモデリングできる。

・ 各種流体に対する点Dの曲線・直線の上側がガスハイドレートの安定域であり、下側ではガスハイドレートは不安定(即ち、天然ガスが存在する)である。

 

 

 

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