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Major Findings

掘削流体の化学的性質による天然ガスハイドレートの抑制に関連する研究者の主たる発見は以下のようにまとめられる。

・ 水の氷点を降下させる物質を含む流体はガスハイドレートの生成を抑制することができる。一般的な物質としては塩類とアルコール類である。

・ 一般的な塩類は水に対して異なる溶解度を有することから、ガスハイドレート生成能力の程度も異なるものとなる。

・ 塩類が飽和、あるいは飽和に近い状態では、ガスハイドレートの生成を助長することとなるので、ガスハイドレートの抑制のためにはその使用は避けるべきである。

・ 低い分子量のアルコールは高い分子量のアルコールと比較して、よりガスハイドレートの抑制に対して効果的である。効果の高い順に並べると以下のようになる。メタノール>エタノール>エチレングリコール>グリセリン>ポリプロピレングリコール

・ アルコール類のガスハイドレート抑制能力の程度は掘削流体中の濃度に依存する。低濃度(5容量%以下)のアルコール類を使用しても、流体中に存在するより強い抑制物(塩分等)のモル分留(mole fraction)を減少させるために働くアルコールの量が少ないために、ガスハイドレート生成を効果的に抑制することはできない。さらに低濃度のアルコール水の中のガスの表面張力を減少させ、その結果としてガスの水の中での拡散を助長することとなる。

・ 掘削流体中の固体粒子(バライト、粘土、セルロース分等)の存在は、流体のハイドレート抑制能力にはあまり影響しない。

・ 実験室においては、水層の塩分濃度が高い(25〜30重量%)場合や、水分が少ない場合にはガスハイドレートを生成することはほとんど不可能であった(文献2)。水層の塩分濃度が15重量%のものは、ある条件下においては天然ガスハイドレートを生成しうるので、その使用は避けるべきである。

・ 天然ガスの組成も重要なパラメータである。ガスの比重が高ければ高いほど、ガスハイドレートの生成を抑制することは困難となる。従って、メタンガスハイドレートの生成は流体中に抑制物を添加する量が少なくても抑制できる。しかしながら、天然ガスは滅多に純粋なメタンであることはないことを認識すべきである。

・ 最も低温となる海底面において、低比重の流体と比較した場合、高比重掘削流体ではその水頭圧がより高くなり、結果としてガスハイドレートの生成がより起こりやすくなる。

 

 

 

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