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(1)一般事情
 カナリア諸島は、アフリカ大陸の北西岸、ジュビ岬から西へ約115?の大西洋上に点在するスペイン領の諸島である。
 総面積は約7,273km2で、人口は1,638,000人(1991年現在)である。
 カナリア諸島は、第三紀およびその後の噴火によってできた火山体で、その溶岩は主として玄武岩と粗面岩であり、テネリフェ島をはじめ多くの火山がある。
 行政的には、東部のラス・パルマス県と西部のサンタ・クルス県とに分かれる。
 前者は、ランサローテ島、フェルテベントゥーラ島、グラン・カナリア島の諸島で構成されている。
 後者は、テネリフェ島、ゴメラ島、ラ・パルマ島、イェロ島から構成されている。
 県都は、それぞれラス・パルマスと、サンタ・クルスで、両市に総人口の40%が集中している。
 カナリア諸島は、ほとんど一年中北東の貿易風の圏内にあり、広大な亜熱帯高気圧圏の東端に位置しており、常春の避暑地としても有名である。
 年平均気温は、16〜21℃である。島民は、スペイン人とかつての先住民グァンチェ族との混血を先祖とする人々であり、宗教はスペインの国教であるローマ・カトリック教である。
 言語は、スペイン語が唯一の通用語で、スペインの慣習が根強く維持されている。
 1900年以降、教育が急速に普及し、整った学校が多数あり、テネリフェ島のララグナには大学もある。
 気温が温和で火山土壌が肥沃なため、種々の農業が行われており、収益も多い。
 しかし、唯一の投資対象である土地は、乾燥しすぎたり、岩が多すぎたり、急斜面であったりして耕作不適地が多く、そのため地価が法外に高い。
 バナナ、トマト、ジャガイモ、タバコ、タマネギ、果実、野菜の栽培が広く行われており、バナナは主要な換金作物となっている。
 漁業は、マグロ、ヘイク、イワシ、サバなどが主で、地方では重要な産業となっている。
 工業は、スペイン政府が石油精製、化学工業、タバコ製造、魚の缶詰などの工場誘致、工業化に力を入れており、ビール、モルト製造、タバコ製造、木材加工業、印刷業、化学工業、魚缶詰、建設業などが、カナリア諸島における重要産業として発展している。
 特に重要な工業として石油精製業がある。
 これは、カナリア諸島が自由港であり、また石油関係は免税地区となっているため、中継港、漁業基地としての各種船舶、漁船の入港が盛んであり、バンカー・オイル供給地としての地の利を得ているためである。
 Compania Espanola de Petroleos SAの大規模な精油所がある。
 15世紀以来、大西洋航路の要衝として栄え、現在は航空路の重要中継地で、ヨーロッパとの交通が頻繁である。
 また、観光業も盛んで、若年層の人口流入も多い。
 日本の遠洋漁業の基地でもある。貿易関係では、カナリアは自由港であるため外国との貿易バランスは入超であるが、スペイン本国、スペイン領アフリカとのバランスは出超を続けている。

 

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