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ベトナム

ベトナム造船業

? ベトナム造船業

 ベトナムは地理的に恵まれた位置にあり、また長い海岸線は造船業の発展にとって理想的な条件である。過去2年間、ベトナム政府は海事経済部門の振興と育成に力を入れてきた。海港、自国船隊、造船業発展のための計画が立案された。東南アジア地域は現在金融危機の状況にあり、ベトナムもその影響に苦しんでいるが、造船業は政府から多少の財政支援を受けている。

 

?-1 現状

 ベトナムは中央集権的計画経済から市場経済体制へと急速に移行しつつある。1986年にドイモイ、すなわち経済改革計画を発足させ、1989年には計画経済諸国の貿易圏の崩壊に伴って、改革を加速した。ベトナムのドイモイ計画は、計画経済諸国の貿易圏の崩壊と相俟って、二つの面で海事産業と漁業に影響を及ぼしている。

1)ドイモイ計画の一環として、ベトナム政府は広範囲にわたって造船・漁業関連事業活動の民営化を奨励している。例えば国有造船所が、先進的な造船技術へのアクセスを確保するために、外国企業と合弁事業を行うことが認められるようになった。また水産省は、民間の水産物加工工場の設立を奨励している。このような工場の登場は漁業部門の活性化につながった。

2)計画経済諸国の貿易圏の崩壊に伴ない、ベトナムは旧東側ブロックからの援助の大半を失った。東側ブロックの援助としては、造船部門、造船用設備、舶用機器等に関する技術協力があったが、これがすべて縮小された。例えば舶用機関は、1989年以前には東欧の旧計画経済諸国から、手厚い補助金による割安の価格で輸入されていたが、1990年以降、ソ連、東独、チェコスロバキアなどの旧貿易相手国から機器を購入することができなくなった。今日ではベトナムは、主として中国、日本、西欧諸国および米国から舶用機関を輸入している。
すなわちドイモイと分権化により、ベトナムは新造船/修繕船部門で西側諸国との合弁企業、その他の形態の事業提携に熱心に取り組んでいる。
ベトナムは国有造船所が外国企業と合弁事業を組むこと、外国企業と事業提携契約(BCC)を結ぶことを認めている。さらにベトナムは、100%外国資本の造船所の設立も認めている。ベトナムは、このような西側パートナーとの提携が、事業ノーハウの習得、新技術の導入、技術協力の獲得、自国造船業への資本注入につながることを期待している。

?-2 ベトナム国内の海事産業基盤

 多年にわたる戦乱と海運部門への投資不足から、ベトナムでは貧弱な造船設備、旧式船舶ばかりの零細な商船隊、港湾設備の立ち後れなどの問題を抱えている。そこで海上輸送能力と港湾システムの拡充計画を進めてきた。世界銀行、アジア開発銀行、2国間協定による海外開発プロジェクト、外国の民間投資家などの協力を得て、ベトナムは2010年までに港湾整備に50億米ドル、2005年までに船隊増強に5億米ドルを投資する予定である。

1)1995年に運輸省が打ち出した運輸部門開発戦略によると、ベトナムは輸送インフラを先進国と同等の水準にまで発展・改善することを目標としている。政府の方針として以下のような施策が実行される。

・東南アジアおよび東北アジアから船舶を誘引できるような中継港を設置する。

・2000年までに荷役能力を現在の35百万トンから110百万トンに拡大する。

2)所定の期限内にこれらの目標を達成するという意図は現実的ではないかもしれない。しかし開発戦略は、海事産業部門を高度化しようというベトナム政府の決意の、そしてこの部門を政府がいかに重視しているかの表われである。フィンランドの海事専門家が行った調査によると、2000年の国内港湾の年間貨物扱量は総計45百万と推計されている。

注: 1)ヴィナラインズが作成した港湾開発指向計画による。
   
  2)ヴィナマリン提供の貨物量数値による。

 

 

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