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? 造船技術面における発展

 1970年代後半まで、中国造船業の活動は国内市場中心で、また技術面でも先進造船諸国に後れを取っていた。1979年以降、政府の改革開放政策に従い、中国の各造船所は国際市場に参入した。当初は主として大手造船所のみが在来型船舶、特にハンディサイズとパナマックス型の撒積船を輸出向けに建造するようになった。1980年代後半に入ると海外船主から新造を受注する造船所が増え、また、より複雑かつ大型の船舶も建造されるようになった。中国国内の31の大・中規模造船所で建造中の船舶を以下に列記する。その内容からして、少数の高度技術を要する特殊船を除き、300,000DWT型以下の多様な船舶が建造されていることがわかる。いずれも中国独自の設計により国内で建造が可能である。

ケープサイズ撒積船(150,000DWT)
   
パナマックス型撒積船(荷役装置付き70,800DWT、標準型73,000DWT)
   
ハンディマックス型撒積船(オープンハッチ式51,800DWT、標準型47,500DWT、44,000DWT)
   
ハンディサイズ撒積船(29,000DWT、27,000DWT)
   
アフラマックス型タンカー(二重船殻構造110,000DWT)
   
パナマックス型タンカー(二重船殻構造71,000DWT、65,000DWT、61,000DWT)
   
プロダクト・タンカー(二重船殻構造44,000DWT、35,000DWT)
   
ケミカル・タンカー(二重船殻構造46,000DWT、13,600DWT、10,000DWT)
   
コンテナ船(1,714TEU、1,600TEU、1,550TEU、1,236TEU、820TEU、746TEU、470TEU)
   
多目的貨物船(28,450DWT、22,600DWT、20,000DWT、12,000DWT)
   
RORO船(8,050DWT、5,700DWT)
   
LPG船(22,800立方米積、16,500立方米積、5,350立方米積、2,000立方米積)
   
高速旅客フェリー

 生産技術については、大・中規模造船所では、NCプラズマ切断、自動溶接、先行蟻装等の近代的手法や機器が大幅に採用されている。工数の削減、作業環境の改善、工作精度の向上のため、船舶設計・建造のコンピュータ化も自主開発技術や海外から導入したトリボン・システムにより実施に移されている。
 生産の自動化と合理化に継続的努力を傾けた結果、中国の造船所は製品の質的改善、生産性の向上、世界市場における価格競争力強化を実現した。

 

? 造船政策

 中国造船業が世界市場に参入してまだ日が浅い1980年代には、低船価で輸出船を受注できるように、政府は各造船所に助成措置を講じた。政府が提供したインセンティブは中国造船業の世界市場進出に重要な役割を演じた。しかし中国が計画経済から市場経済に移行し、外貨管理制度を改革するとともに、中国政府は1980年代末期に前述の助成策を取りやめた。
 中国の各造船所は、近隣諸国の弱い通貨に対して人民元が強いために、競争力が低下し、きびしい状況にさらされている。中国政府は造船業の競争力強化を支援するために、本年(1998年)6月1日から船舶輸出に対する輸出税割り戻し率を引き上げた。輸出税率は17%で、引き上げ前は、そのうち9%が造船事業者に還付されていたが、戻し税率がこの措置により14%となった。それでも船舶輸出税として3%の負担が残っている。
 造船業を対象とするもう一つのインセンティブとして、造船所の事業資金調達を助けるために、最近中国輸出入銀行(EXIBC)が信用を供与することになった。EXIBCからの支援は、造船所の経営状況改善に役立つといえる。

 

 

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