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ドイツに学べ

スポーツクラブ先進国

by アクセル・ベッカー

第2回 子どもたちとスポーツクラブ

[このコーナーは、福島大学の黒須充助教授にコーディネートしていただいています。]

 

ドイツでは、青少年の40〜50%が地域のスポーツクラブに所属して、何らかのスポーツ活動を行っています。今回は、子供たちがいかにしてスポーツクラブに参加するのか、またはしないのかについて、3つの典型的なパターンを紹介しましょう。

まず最初のパターンは、スムーズにスポーツクラブに参加していく子供たちです。彼らの両親がスポーツクラブに所属している場合、子供たちも、すでに2〜3歳頃から親子体操教室などを通してスポーツクラブを体験し、ごく自然な形でスポーツクラブと出会います。こうした子供たちは、かなり早い時期から特定の種目を始めるケースが多く、その中で才能を見出された子供の中には、将来、国を代表するような選手に育っていくことも珍しくありません。しかし、それ以外の子供たちにとっても、スポーツクラブは、学校とは違った魅力を持つ存在として認識されています。

第二のパターンは、学校でスポーツの楽しさに気づいた子供たちです。昨今の子供を取り巻く遊び環境の悪化や運動能力の低下を補うため、通常、週3時間の体育の授業が行われています。ここでスポーツを好きになった子供たちは、ほぼ間違いなく、スポーツクラブに入会し、生涯スポーツへの第一歩を踏み出します。また、最近では、スポーツクラブから学校に対して、施設の共同利用、指導者の派遣、プログラムの開発など積極的な働きかけを行っています。こうした学校とスポーツクラブの長期的なパートナーシップによって、新たなメンバーを獲得できるとともに、才能ある選手の発掘・育成にもつながっているのです。

では逆に、体育の授業が退屈であった場合はどうでしょう?第三のパターンは、いわゆるスポーツは苦手だという子供たちです。彼らは運動神経がないと自認しています。サッカーのメンバーを決めるときには、いつも一番最後にしか選ばれず、体育の時間も仕方がないからやっているだけで、スポーツクラブに入ろうなどとは、夢にも思いません。ただし、この場合、体育の先生の指導のあり方にも問題があるのですが、"運動神経がない"ことよりもむしろ、スポーツクラブに対する世間一般のイメージ、つまり、「スポーツクラブとは運動が得意な人のためにある」といった世間一般の考え方に少なからず影響されているように思われます。

これからのスポーツクラブは、運動能力に優れた、上達の早い者だけではなく、その「周辺」に位置する子どもたちとの関わりを抜きにして、未来を展望することはできません。足が速いから、運動が得意だからスポーツクラブへ入るのではなく、「スポーツが好きだから入れるクラブ」へと方向転換を図ることが大切です。

 

子供たちの「クラブ離れ」

 

さて、青少年のスポーツクラブを統括するドイツスポーツユーゲントは、青少年の教育活動の中でも極めて高い組織率を誇っています。しかし、そのすべてが順風満帆にいっているわけではなく、多くの子供たちは、15歳から18歳の間に、「この先もスポーツを続けるべきか」といった最初の大きな岐路に立たされます。学校のこと、将来のこと、または友人などに影響され、大部分の子供たちのスポーツ履歴は、まずこの年齢で転機を迎えます。若者の価値観の多様化、個別化傾向、メディア社会への埋没など他にもいくつか理由を挙げることができますが、こうした思春期の「クラブ離れ」をいかにくい止めることができるかが、我々に課せられた重要な課題といえるでしょう。

いずれにせよ、ドイツにおけるスポーツクラブとは、あらゆる人々の自由意志に基いたスポーツ及び文化活動を公的に支援する社会的な機関です。そのため、国や自治体から財政的な援助を受けることができるわけですが、決して行政主導型ではなく、あくまでもボランティアの役員や指導者を中心とした住民の自主運営によって成り立っていることを忘れてはなりません。

今回は、子供とスポーツクラブとの出会いを中心に紹介してきましたが、人々とスポーツとのかかわり方は、性・年齢・目的によってさまざまです。たとえ、いったん離れたとしても、また戻って来て、自分のペースで楽しむことができるような、そんな魅力あるクラブこそが、これからのスポーツクラブの姿だと考えています。

 

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SSFを訪問されたアクセル・ベッカー氏(左から5人目)

 

こまつなおゆきの「元気の作り方」講座 ○第4回

 

すべての回答は筋肉に聞け!

 

健やかで若々しく、美しくあるために、筋肉にカツをいれなきゃならない!

年齢・性別にかかわず運動が推奨される大きな理由は、筋肉の性能を高め、できれば量を増やすため。

なぜ、筋肉が大事か。理由を八つにまとめてみました。

 

1 若々しい姿勢・動作を支える

一番わかりやすいのは力を出してくれること。筋内はエンジンです。筋肉が張力を発生してくれるので、私たちはさまざまな動作をすることができます。姿勢についても忘れてはイケマセン。悪い姿勢の原因の一つは筋力不足です。

2 ポンプとしての筋肉

夕方になると足がむくむ、ダルイといった悩みをもつ女性は多いようです。たいていの場合、脚の筋肉が使われないことが原因。血液が心臓に戻りにくくて、しかたなく水分が血管からしみだして細胞の周りに溜まってしまってむくむのです。末梢から心臓へ向かう静脈にはところどころに弁がついていて血液が逆流しないようになっています。周りの筋肉が収縮して静脈を圧迫すると、血減は押し出されます。こうして血液は心臓の方向へ戻っていくのです。

3 筋肉はボイラーだ!

体温はどこでつくられているか、考えたことはありますか? 筋肉のもう一つの大きな働きは熱を作り出すこと。体温を一定に保つためにはかなりの量のエネルギー源をつねに燃やしている必要があります。一日のエネルギー消費量の七割前後がそのために使われています。その場所が主に筋肉なのです。私たちがじっとしているときにも、筋肉は脂肪を燃やし続けてくれているのです。運動不足で筋肉がなまるとこの性能も低下します。中年ぶとりの原因はここにあります。筋肉量の多いからだは、じっとしているだけでもエネルギー消費の多い、つまり太りにくいからだなのですね。

4 バネとしての筋肉

筋肉は自ら収縮して力を発揮します。しかし、筋肉を引き伸ばす力が外から加わったときには、その力を少し蓄える機能があります。ちょうどコイルばねを引き伸ばしたときのように、元に戻ろうとする]作用があるのです。私たちは筋肉のこの働きをうまく利用して、少ないエネルギーで効率よく運動できるようになっています。

5 筋肉はプロテクター

中高年になって膝の痛みを訴える女性は多いようですが、腿の前面についている筋肉が弱くなると膝の関節に負担がかかりすぎて痛みが出ます。症状の軽いうちは大腿前面の筋肉を強化してあげると痛みが消えるケースも多いのです。腰痛の場合は腹筋が弱っている場合が大半です。関節を守っているのは筋肉。もちろん何かにぶつかったときに骨や内部の組織を衝撃から守る鎧の役目も果たします。

6 大脳を活性化するのも筋肉

筋肉には脳から神経が通っていて、脳の指令に応じて力を発揮しますが、逆に筋肉から脳へ情報を伝える神経もあることを見逃してはいけません。筋肉から脳への刺激は脳を活性化させ、疲れた脳をリフレッシュさせたり、記憶力を高めます。「寝たきり」になるとボケやすいというのも、筋肉からの脳への刺激が急になくなるからなのです。

7 しっかりした骨をつくる筋肉

骨粗鬆症は女性にとって大きな問題ですが、いくらたくさんのカルシウムを食事でとっても、運動不足では骨は強くなりません。カルシウムは、筋肉が張力を発揮して骨に力が加わると骨に吸収されるのです。骨や関節は筋肉が養っていると言えるでしょう。

8 筋肉は健康で美しいからだの土台

からだの形は骨、筋肉、皮下脂肪、そして皮膚によって決まってきます。ボディーラインはさまざまな曲線が集まってできあがっていますが、その土台を作っているのは筋肉。外見は細いのに、筋肉が少なくて皮下脂肪が多い女性は増えているようですよ。「隠れ肥満」、気をつけてください。

 

小松直行

1960年横浜市生まれ。筑波大学卒。東京大学大学院教育学研究科体育学専攻修士過程修了、同博士課程中退。資生堂研究員を経て95年より日本女子体育短期大学講師。『身体教育の社会学(高文堂)』『ウエルネス・ウォーキング(求龍堂)』『ボディーズ(マガジンハウス)』などの著・訳書がある。

 

SSF・TOPICS

http://www.ssf.or.jp/

E-mail:info@ssf.or.jp

 

『スポーツの社会学』刊行

スポーツが国際政治や経済のの動向に影響を与え、新しい文化を創造する動因となって。きています。新世紀へ向けて、スポーツ改革の促進要因を社会科等の観点でまとめたシリーズ第1巻。人口構造や少子・高齢化社会、商業主義、ドーピングなど、スポーツをめぐる様々なテーマを豊富なデータを用いて語られています。今後、スポーツの「経済学」「経営学」「政治学」についても刊行される予定です。

編集は池田勝氏・守能信次氏。定価は2,625円(税込)。ご希望の方は、杏林書院(Tel 03-3811-4887)まで。

 

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「ワールドゲームズ秋田」

カウントダウン開始

2001年の「秋田ワールドゲームズ大会」の開幕まで999日と迫った昨年11月21日、カウントダウンを告げるモニュメントが秋田駅に設置された。

モニュメントは「世界の国から輝く太陽がやってくる」をコンセプトに、太陽が描かれた箱50個を積み上げたもので、高さ2.5m、幅2.4m。

林善次郎秋田ワールドゲームズ2001組織委員会会長が挨拶し、寺田典城秋田県知事ら6人と子供たちがモニュメントの除幕を行った。また、市内のホテルでは記念シンポジウムが開かれ、長崎宏子さん(元五輪水泳日本代表)や西木正明さん(直木賞作家)らが、ワールドゲームズやオリンピックなどのスポーツイベントの在り方についての意見交換を行った。

 

SSFネットワークミーティング開催

欧米型スポーツクラブをテーマに、SSFネットワークミーティングを開催しました。11月6日の福井では31名が参加、FIFA公認代理人の糀正勝さんにドイツのスポーツクラブについてのレクチャー。翌7日の神戸では36名が参加、(社)神戸レガッタ&アスレチック倶楽部(KR&AC)を訪れ、総支配人の大内達也さんが施設を案内してくださいました。12月5日の横浜では24名が参加、(社)横浜カントリー&アスレチック・クラブ(YC&AC)総支配人の依田成史さんから、スポーツクラブの運営についてのノウハウを拝聴。今後の開催予定については、SSF業務課までお問い合わせください。

 

 

 

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